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ローゼンベルク家の食卓

メッセージ欄

2008年6月の日記

スクランブルエッグ

2008/06/04 19:59 短編十海
20000ヒット御礼短編
ディフの初めてのお料理。
まだディーと呼ばれていた、くりんくりんの赤毛にそばかす顔の男の子だった頃のお話。
「ねえ、ディフが初めて作った料理って、何?」

 朝飯の仕度をしていたら、シエンに聞かれた。即座に答える。

「スクランブルエッグ」

 こればっかりは忘れようがない。

「最初の一品は見事に失敗しちまったけどな」

 シエンは目をぱちくりして、それからくすくす笑いだした。

「ディフでもそう言うことってあるんだ」
「無茶言うな。まだ8つだったんだぞ」
「俺もそれぐらいかな。やっぱりお母さんのお手伝いで?」
「いや。必要に迫られて」


 ※ ※ ※ ※


「ただいまー。ママ、おなかへったー」

 学校が終わってから友だちと力一杯遊びまくって。腹を減らして帰ってきたら、兄貴が途方に暮れた顔をしてキッチンに立っていた。

「にーちゃん、ママは?」
「………出かけてる」

 兄貴の手にはお袋が書いたメモがにぎられてる。いつもならおやつの場所が書いてあるはずなんだが……。
 この日に限ってよっぽど急いでいたらしい。『買い物に行きます』としか書いてなかった。

「にーちゃん、はらへったー」
「しょうがないな……」

 兄貴と二人でパントリー(食品庫)、戸棚の中、冷蔵庫の中、くまなく探した。しかし間の悪い時ってのはあるもんで。
 リンゴも、バナナも、クッキーもクラッカーもシリアルもなし。チョコもなし。かろうじてツナの缶詰を発見したがあいにくとまだ二人とも親のいない所で缶切りを使っちゃいけないことになっていた。
 もちろん、火も。

「にーちゃん、はらへった……」

 せめてパンがあればピーナッツバターとぶどうジャムのサンドイッチぐらい作れたんだが。あいにくとこう言う時に限って、ない。
 兄貴はコップを二つ取り出すと、ミルクをなみなみと注いで、たん、とテーブルに乗せた。

「ほら」
「いただきまーす」

 二人して向き合い、コップをかかえて、んくんくと飲み干す。けっこう腹がふくれる……ような気がしないでもないが、やっぱり足りない。
 飲み物だけじゃ物足りない。形のある食べ物が食べたいよ。
 じーっと空っぽになったコップの底をにらんでいると、兄貴が言った。

「もう一杯飲むか?」
「うん」

 二杯目はちょっとだけゆっくり飲んだ。
 それからしばらくは部屋でマンガ読んだりして時間をつぶしていたんだが。1時間もすると、猛烈に腹が減ってきてがまんできなくなってきた。しかもさっきより強烈に。

 ちょこまかと兄貴の部屋に行くと、宿題をしていた。なかなかこっちを向いてくれないので、近寄ってくいくいとシャツの裾をひっぱってみた。

「にーちゃん、はらへったー」
「ガマンしろ」
「はらへったー」
「ミルクでも飲め」
「はーらーへーったー」
「……………うるさい」

 やっとこっちを見てくれたと思ったら、ずるずる引っぱり出されて廊下にポイ。目の前でドアががちゃりと閉まる。

 追い出された。

 さて、どうする。あきらめてまたミルクでごまかすか?
 とぼとぼとキッチンに戻り、冷蔵庫を開ける。
 その時、ひらめいたんだ。目の前に材料はある。だったら自分で作ればいいじゃないか! ってね。

 さて、何を作ろう?
 包丁を使っちゃだめ、火を使っちゃだめとお袋に厳しく言われてる。叱られる要素は少ない方がいい。だから包丁は使わないようにしよう。

 包丁を使わずに作れるものは……。

「ん、しょっと」

 のびあがって卵を二つ、取り出した。
 スクランブルエッグにしよう。
 作り方なら、なんとなくわかる、ような気がする。毎朝、お袋が作るのを後ろからじーっと見ているから。(できあがるのが待ちきれなかったもんだから……)

 シンク下の棚を開けて、フライパンをひっぱりだしてコンロに乗せる。幸い、よろけたりはしなかった。この頃から力は強かったんだな。
 薄く油を引いて、コンロに火をつけて……あれ、順番逆だったかな?
 まあ、いいや。

 かちっとダイヤルを回して火をつける。胸がどきどきした。いけないことをしてるって自覚はあった。でも腹減ってるからそっちが優先だ。
 強火でガンガン熱せられて、あっと言う間にフライパンが熱くなる。顔がチリチリしてきた。
 あわてて卵をカシャカシャと割って中に放り込む。
 なんか、妙な具合に力が入って握りつぶしちまったけど、細かいことは気にしない。中身を出してすっかり軽くなったカラを放り出し、フォークでフライパンの中身をがしゃがしゃ混ぜる。力一杯まぜる。
 みるみる卵が白く固まって行く。
 よしよし、いい具合だ。そうだ、味をつけないと。塩とコショウを出してきて、ぱぱっとかける。
 一見順調。でも、なんか………変だな。
 
 お袋が作った時みたいにとろっとしない。ぽろぽろのぱさぱさだ。妙にフライパンにくっついてるし。混ぜ方が足りないのかな。
 フォークでさらに混ぜる。
 なんか、余計にぱさぱさになったぞ? あ……やばい、茶色っぽくなってきた。こげる、こげる。
 急いで火を止めた。

 フライパンの中には粉砕されてパサパサになった卵が二つぶん。とろっとも、ふわっともしていない。だいぶ理想とかけ離れた代物だったが、とにかく食えればOKだ。
 皿に乗せて、気に入りのフォークをそえてテーブルに運ぶ。太い柄のずっしりと重いフォークは8つの子どもの手にはいささか大きすぎたが、いつも食う時はこれと決めていた。

「いただきまーす」

 ぱくっと口に入れる。うん、卵の味だ! 俺にもちゃんとできたぞ。得意満面であぐっと噛んだその瞬間。じゃりっと堅いものが舌に当たった。

(うぇ、なんだ、これ?)

 ぺっと皿の上に吐き出す。白くてひらぺったい堅い物質……卵のカラだ。どうやら、割る時にぐしゃっとにぎりつぶしたのがまずかったらしい。
 まいったな、ぜんぜん気がつかなかった! まあいい、細かいことは気にしない。食えればいいんだ。
 じゃりっと堅いものが当たるたびに、ぺっぺっと吐き出しながら食べた。
 何だかくやしかった。お袋が作ってくれる、とろっとして、ふわっとした金色のスクランブルエッグとはあまりに違いすぎる。
 次はもっと上手く作ろう。子供心にそう誓った。


 ※ ※ ※ ※


 生まれて始めての料理。こっそり隠れて作ったはずが、簡単にバレた。
 なるほど、冷蔵庫はきちんと閉めたが卵のカラがそのままだったし、フライパンも皿もシンクに突っ込んだだけ。
 帰宅したお袋に、現場は目一杯雄弁に語ってくれたのである。
 兄貴は何も言わなかったが、出しっ放しのフォークで犯人はすぐ俺だと知れた。

「ディー! 一人で火を使ったのね? Bad-Boy!(いけない子)」

 ヘーゼルブラウンの瞳にほんの少し、緑が混ざってる。本気で怒ってるんだ。

「……ごめんなさい、ママ」
「手、見せて。火傷してない? 怪我してない?」

 真剣な顔でお袋は俺の手のひらや顔、首筋を確認し、それからほーっと深く息を吐いた。

「……うん、異常なしね。よかった」

 ぎゅっと抱きしめられる。柔らかくてあったかい胸の中にすっぽりと包まれた。

「もう二度と一人で火を使っちゃだめよ? 使いたい時は、ママかパパを呼びなさい。いいわね?」
「うん………ごめんね、ママ」

 心配かけちゃった。
 叱られたことより、そのことが胸にずくんと突き刺さった。

「ごめんね、ママ」

 くしゃくしゃと頭を撫でられた。しばらくの間、お袋は俺のことを抱きしめていたが、やがて大きく深呼吸してから、にこっとほほ笑んだ。

「それで……何を作ったの?」

 声が長調になってる。
 ママはもう怒ってない。
 悲しんでもいない。

 そう思ったら腹の底からくすぐったい波が登ってきて、にぱっと顔全体に広がった。

「スクランブルエッグ!」
「どうだった?」
「ぱさぱさでジャリジャリ」
「あらあら。でも全部食べたのはえらかったわね」

080624_0042~02.JPG
※月梨さん画。ディー坊や(8さい)


 その日の夕食はどうしたかって?
 もちろん、全部食ったよ。さすがにデザートは食べさせてもらえなかったけどな。

 そして次の朝。

「おはよう、ママ」
「おはよう、ディー」

 キッチンに入ってくと、お袋がいつものようにスクランブルエッグを作っていた。とことこと近づいて、見守った。目を皿の様にして、じっくりと。
 お袋は俺が見てるのに気づくと、いつもよりゆっくりと作ってくれた。
 かしゃん、ぽん、と卵を割って、ミルクをほんのひとたらし。

「いい? ディー。あわてちゃだめよ。やさしく、ささっと……ね?」

 フライパンの中で、いつものとろっとしたスクランブルエッグができあがって行く。
 そうか、あのダイヤルで火を小さくすれば良かったんだ!
 それに、力いっぱいがしがしかき混ぜれば良いってもんじゃなかったんだな。混ぜるのも、普通のフォークじゃなくてサラダ用の大きな木のフォークを使うのか。

「あらかじめ卵をボウルに割っておいてもいいのよ。自分の分、やってみる?」
「うん!」


 ※ ※ ※ ※


 カシャっと卵を片手で割り入れて、ミルクをほんのひとたらし。サラダ用の木のフォークでかきまぜる。
 あわてず、中火で、やさしく、ささっと。

「よし、できたぞ。皿持って来てくれ」
「はーい」

 もう失敗はしない。


(スクランブルエッグ/了)


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【side4】犬のお医者さん

2008/06/04 20:08 番外十海
拍手用お礼短編の再録。
【3-10】赤いグリフォン【後編】【3-11】ジャパニーズ・スタイルの前後のお話。
本編ではご無沙汰のエリック、こんな事してました。

 犬は好きだ。
 猫も好き。実家で飼ってるしね。

 しかし、さすがにリードをつけてるとは言え、シェパード犬二頭つれてサンフランシスコ市内を歩くって言うのは……
 ちょっと目立つな。
 道行く人がみんな振り返ってる。

 一頭は茶色い顔に黒い背中のスムース(と、言ってもこの犬種特有の毛の分厚さはあるけれど)
 もう一頭は黒のロングコート。
 毛並みはちがうけれど骨格はそっくりだ。さすがに同じ遺伝子使ってるだけあるな。

「あー、わんわんー」
「わんわんだねー。かわいいねー」

 学校帰りの親子連れが手をふり、声をかけてくる。
 デューイはむすっとした顔をして黙っているけれど、ヒューイはそっちを向いてぱったぱったとぶっとい尻尾を振って答えた。
 そうすると、子どもはますます喜んで、ぶんぶん手をふる。

 可愛いなあ。
 ほほ笑みかえし、親御さんと軽く挨拶を交わした。

「お散歩ですか?」
「ええ、まあ」
「たいへんですね」
「ありがとうございます」

 別に散歩してる訳じゃない。同僚の付き添いで病院に向かっている所なんだ。
 茶色い方のデューイは爆弾探知犬。黒い方のヒューイは警察犬。
 K9課でもない、爆発物処理班でもない、鑑識のオレがこいつらのリードを握っているのにはちょっとした理由がある。


 ※ ※ ※ ※


 Q:同僚が困っています。助けますか?
 Yes/No

「頼む、エリック。娘を学校に迎えに行かなきゃならないんだ!」
「彼女とのデートに遅れそうなんだ!」

「こいつらの面倒見てくれ!」

 この場合、Noと答える選択肢はない。こっちは独身だし、恋人もいないし。

「いいっすよ………」
「ありがとう! じゃ、これ診察カードな、ヒューイの分」
「こっちはデューイの分だ。場所はここ!」

 きちんと動物病院までの道順に赤いラインを引いた地図まで用意してあった。あれ、随分手際がいいなあ、なんて思った時は二頭のリードがしっかりオレの手の中に押しつけられていて……。

「それじゃ、行こうか」
「わうっ」
「うふっ」

 そんなわけで、ヒューイとデューイを予防注射に連れてくことになっちゃったんだ。
 しっかり領収書をもらうように念を押されて。


 ※ ※ ※ ※


「はーいヒューイもデューイもいい子だからねー。優しい先生が待ってるよー」

 受け付けをすませて診察室に入る。
 診察室の入り口で二頭はちょっとの間立ち止まったけれど、すぐに尻尾を振ってとことこと中に入ってくれた。
 白衣を着て眼鏡をかけた東洋系の先生が待っていた。
 背は低め、骨格も華奢で穏やかな顔立ち。黒髪のベリーショート、くりっとした濃いめの茶色の瞳が可愛らしい。
 ヒューイとデューイの頭を撫でて話しかけた。

「ラッキーだねー、女医さんだ、ほら!」
「え」
「……違うんですか?」
「よく間違えられます……」
「あ……そりゃ……申し訳ないことを……」

 首をかしげて足元を見下ろす。ヒューイもデューイもきちんと後足をたたんで座り、先生を見上げて尻尾を振っている。
 ぶっとい尻尾がぱたぱたと床を叩いている。二頭ともえらくご機嫌だ……デューイはほとんど顔に出ないけど。

「こいつら女医さんだとすごいご機嫌なもんだから、つい」
「へっへっへっっへっへっへっへ」
「わふ」

 女医さんじゃないとすると……。

「えーっと、もしかしてお手伝いの助手さん、ですか? 先生は?」
「確かに手伝いで来てますけど」

 微妙な表情で口ごもってる。あれ、オレ、またやっちゃったのかな。

「もしかして……ドクター?」

『先生』は前回分のカルテを確認し、注射を2本用意すると診察台の高さを調節した。とても手際がいい。

「一匹づつ乗せてくださいね」
「わかりました……ヒューイ、アップ!」
「わう」

 黒い体がバネのようにしなり、軽々と台に飛び乗る。

「ダウン(伏せて)」

 ぺたん、と伏せた所で先生は首筋の皮をちょっとつまんで消毒すると、ぷちっと注射を打った。


「はい、おしまい」
「う?」
「え、もう? 早いなー! すごいや、先生」

 押さえる前にもう終わっちゃってたよ。普通こう言うのって飼い主が保定するんだよね? 噛まないように、主に頭をがっちりと。
 実家の猫の時なんかすごかった……たとえるなら、そう、修羅場。
 歯ぁ剥いて暴れて、姉とオレと父とで三人掛かりで押さえ込まなくちゃいけなかった。先生も助手さんもとてもじゃないが触れたもんじゃなかったんだ。
 いいなあ、犬は、楽で。

「ヒューイ、降りて……よし、いい子。次、デューイ!」

 ……耳を伏せて明後日の方を見てる。こいつ、わかっててしらばっくれてるな?

 先生は慌てずにっこりして呼びかけた。

「おいで、デューイ」

 ちらっとデューイは肩越しに振り返り、首をかしげて見ている。先生はにこにことほほ笑んで、とん、と診察台の上を軽く叩いた。
 その瞬間。
 デューイがぴょん、と診察台の上に飛び乗り、何も言われないうちに自分から伏せの体勢をとっちゃったじゃないか!

「すごい! どんな魔法使ったんですか?」
「いいえ、全然?」

 言ってる間に、また首筋の皮をちょっとつまんで消毒して、ぷちっと打って……。
 デューイがのそっと床に降りた。自主的に。

「え……もう終わったんですか?」
「はい」
「すごいなー。オレ、正規のハンドラーじゃないからどうしてもこいつに舐められちゃって」
「でも頭のいい子達ですよね。訓練されてる」
「ヒューイは警察犬、デューイは爆弾探知犬なんです。サンフランシスコ市警の」
「ああ、それで……じゃあ警察の方なんですね」
「はい。鑑識課です」

 先生はちょこんと首をかしげてる。
 そうだよな。全然関係ない部署の人間が、何で? って思ってるんだろう。

「ハンドラーが二人とも都合悪くて‥…こいつら、オレになついてるから」
「でもちゃんと病院に来られるんだから、立派ですよ。飼い主以外じゃ絶対にだめって犬も多いですからね」
「こいつら公務員ですから!」
「わう」
「うふ」

 ごほうびのクッキーをもらって、ヒューイもデューイも帰りはご機嫌だった。
 受け付けで支払いを済ませ、領収書をもらって署に戻った。


 ※ ※ ※ ※


 それから何日かして。
 たまには人間らしい物を食べようと、スーパーのデリカテッセンでおかずを物色してたら声をかけられた。

「こんにちは、エリックさん」
「………え?」

 きょろきょろと周りを見回してから、ずいっと視線を下に下げると………黒髪の眼鏡をかけた男の子がいた。茶色い横縞のセーターを着ている。東洋系かな?
 
「えーっと……君、だれ?」
「ほら、この間、犬の予防注射で。ヒューイとデューイ連れてきた方ですよね?」
「あ……ああ、あの時の、先生!」

 びっくりしたなあ。まるっきり中学生にしか見えなかったよ。

「お買い物ですか?」
「え、ええ、まあ、飯の買い出しに。先生も?」
「はい………でも、あんまり気に入ったのがなくて。やっぱ日本から取り寄せないとダメかな」

 何やら本格的な買い出しらしい。


「日本から?」
「ええ、日本食の材料、探してるんですよ」
「ああ、それだったらジャパンタウンにも日系のスーパー、けっこうありますよ」
「ありがとう、後でそっちにも行ってみます」
「あ……そう言えば先生、さっきオレの名前」
「はい。俺、時々マクラウドさんのお手伝いしてた事があるんですよ、ペット探しの」
「マクラウド……ああ、センパイの! それでか」
「ヒューイとデューイの話したら、すぐわかったみたいで」
「そっかあ……」

 あいつらセンパイに懐いてたからなあ。
 とくにデューイ。少しばかり癖のある犬だけど、無事に任務を果たした後はよくセンパイととっくみあってじゃれ合っていた。
 毛だらけになって、ぶっとい首、抱えてごろごろころげまわって……
 どっちが犬? って感じだったっけ。

「そう言えば俺の名前まだ言ってませんでしたね。サクヤ・ユウキっていいます」
「サキュヤ? サ、キュ……あれ?」
「やっぱり言いづらいかな。こっちではサリーって呼ばれてます」
「そうですね、ちょっと難しい。オレはハンス・エリック・スヴェンソンって言います」
「ハンス?」
「配属されたとき、同じ部署に既にハンスって人がいて。ハンス2号か、ミドルネームのエリックかどっちか選べって言われて」
「ハンス2号って………もしかしてそれ、マクラウドさんが?」
「ええ」
「あの人、変わった呼び名つけるの得意なんだなあ………」

 どうやら『サリー』はセンパイの命名らしい。
 そのまましばらく立ち話をしてから、『じゃあ、また』と手を振って別れた。

 それにしても彼、いつ、どこでオレのことセンパイに話したんだろう?

(……しばらく会ってないなあ)

 会えば切ない。わかっちゃいるけど、会えないとやっぱり寂しい。
 何だか無性にデューイをハグしたい気分になった。


(犬のお医者さん/了)

次へ→【side5】ハートブレイク・ランチ

アレックス

2008/06/07 13:59 人物紹介
  • アレックス・J・オーウェン
  • ジーノ&ローゼンベルク法律事務所の秘書。
  • 短い灰色の髪、薄い空色の瞳。初登場時41歳。
  • 2006年に結婚。息子ができた。
  • レオンの執事。
  • ローゼンベルク家に代々仕えてきた一族の出身。家族は全員本家の使用人。
  • 本家にいた頃からレオンつきだった。現在は個人秘書としての仕事をこなしつつ、法律事務所の事務管理全般を担当。
  • 事務所で簡単な昼食や夜食、おやつ等は彼がつくることが多い。時々シエンディフにレシピを教えている。
  • 趣味で色々な資格を持っている。看護士もそのひとつ。
  • 双子は意外になついている。
  • 結婚後はレオン達と同じマンションの5階に転居。それまでの6階の部屋は仕事部屋になっている。
alex2.JPG alex.jpg
※月梨さん画、アレックス

人物紹介

2008/06/07 14:02 人物紹介

記事リスト

オティア

2008/06/07 15:21 人物紹介
  • オティア・セーブル
  • マクラウド探偵事務所助手。
  • ややくすんだ金髪と柔らかい紫の瞳。シエンとは双子の兄弟。オティアのほうが髪は短い。
  • 小さい頃は本当にシエンとそっくりだったが、最近は外見的にも区別がつくようになりつつある。左きき。
  • 1989年9月11日生まれ。
  • 他人にはなかなか心を開かず、警戒心が強い。強度の人間不信。
  • ポーカーフェイスが得意というより行きすぎている。なかなか人に感情を読ませない。そのためわかりにくいがシエンと同じく、もろいところがある。
  • ESP能力を持つ。シエンと二人だとかなり強力な治癒能力を発揮する。
  • 軽い念動力も持ち、こちらは時折一人で訓練をしているらしい。
  • ディフの事務所の手伝いは主に電話番、データ処理や経理、インターネットや書籍での調べ物等。外まわりは動物探しがメイン。
  • 元々簡単な護身術のようなものは使えたし喧嘩もそこそここなすが、今はディフに格闘術を習っている。
  • そのディフとは微妙に相性が悪く、べたべたされたくないタチのオティアは避ける傾向がある。
  • 色は青系が好き。
  • 写真・ビデオは嫌い。カメラを向けられると破壊することもある。
  • 動物には優しい。
  • エドワーズ古書店からもらわれてきたを飼いはじめた。
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※月梨さん画オティア

シエン

2008/06/07 15:21 人物紹介
  • シエン・セーブル
  • ジーノ&ローゼンベルク法律事務所の秘書見習い。
  • ややくすんだ金髪に、柔らかい紫の瞳。身長は170cm前後。オティアとは双子の兄弟。
  • 区別をつけるために髪をのばしはじめた。右きき。
  • 1989年9月11日生まれ。
  • 性格は比較的温和だが、臆病で内向的。突発的事態には弱く、何かあると自分を責めやすい。そのせいか謝り癖がある。
  • 精神的に不安定になりやすく、オティアに比べるとアップダウンがある。
  • ESP能力を持つ。オティアと二人だとかなり強力な治癒能力を発揮する。
  • 人の視覚や意識から自分達の姿を隠すこともできるようだが、本人は気付いていない。
  • 人混みはかなり苦手。
  • 知らない人にさわられるのも苦手。突然だとパニックを起こすことも。
  • 事務所では無口で大人しい子と見られているらしい。元々記憶力が良いのとアレックスのサポートもあって、仕事はうまくいっている。
  • 家事は基本的に得意。
  • 料理は自分の好きなものがつくれるから、という理由ではじめた。
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※月梨さん画、シエン

サリー

2008/06/07 15:22 人物紹介
  • 結城朔也(サクヤ・ユウキ)
  • まだ学生。実習のためサンフランシスコの大学病院に通っている。
  • 日本人。ディフの同級生だったヨーコの従弟。
  • サクヤという名が言いづらいためにサリーと呼ばれているが、男性。
  • 女っぽいわけではないのに、よく女性と間違われる。そしてやけに若く見られる(高校生か中学生ぐらいに見えているらしい)。
  • 職場では水色白衣。レンズ大きめの眼鏡着用、私服はカジュアル系で動きやすいもの。
  • 現在はサンフランシスコ市内、マリーナ地区で一人暮らし。デービスにいた頃は親友のテリーと一緒に住んでいた。
  • 家族は日本にいる母のみ。
  • ヨーコの一家も近くに住んでいて家族同様のつきあいをしている。
  • 具体的には、サクヤの母(桜子)とヨーコの母(藤枝)は双子の姉妹。
  • 料理はそれなりに得意。大学の友人に日本食をつくったりしている。
  • けっこういろんな誘いはあるようだが、全部スルー中。
  • 動物の扱いは当然ながら上手い。ディフがペット探しの仕事を受けたときに時々手伝っている。
  • 弱点:虫。
  • 実家では、犬(ゴールデンレトレバー)、猫3匹など色々と動物を飼っている。
  • ある特殊な能力を持っているが、それをおおっぴらに使うことはない。
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illustrated by Kasuri

レオン

2008/06/07 15:22 人物紹介
  • レオンハルト・ローゼンベルク
  • ジーノ&ローゼンベルク法律事務所の弁護士。
  • 髪と目はライトブラウン。短髪。身長は180cm前後。着やせするタイプ。
  • 1979年12月25日生まれ。
  • ゲイであることは公表済み、根本的に女嫌い。
  • 学生時代にディフと出会って、自分が好意を抱いていることに気づいて悩むが、結局親友のままでいようと決心。しかし紆余曲折を経てディフから告白された。
  • 法律事務所は先輩弁護士であったデイビットが独立する時に資金提供し、共同経営者となって設立。
  • 弁護士としてはとても若いが切れ者として名が売れつつある。本来の専門は知的財産権など、民事。
  • レオンはカミングアウトしている&デイビットがラテン系&レイはアフリカ系という構成の事務所のため、マイノリティからの依頼が多い。
  • ローゼンベルクの本家は、ロサンジェルスが本拠地。家族はそちらに住んでいる。
  • ディフが高校の寮でルームメイトになったため知り合うことに。ヒウェルとはその頃はほとんどつきあいはなかった。
  • 大学はまずカリフォルニア大学バークレー校(UCB)に通い、その後サンフランシスコ校(UCSF)のロウスクールに通った。
  • 基本的に、ディフと双子に近づく人物はすべて彼の詳細なチェックを受ける。問題ありと判断された者は、わからないうちに排除されていることが多い。
  • 見た目は温和そうだが、けっこう黒い。オティアとは傾向は違うがやはり人間不信。
  • 護身用に武術もやっているらしい。
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↑月梨さん画、レオン。

ディフ

2008/06/07 15:22 人物紹介
  • ディフォレスト・マクラウド
  • 制服警官→爆発物処理班→現在は私立探偵
  • ゆるくウェーブのかかった赤毛、長さは軽く肩につく程度→だんだん伸びて今は肩甲骨のあたりまで。ヘーゼルブラウンの瞳。
  • がっちりした骨組みにしっかり筋肉のついた骨太の体型。身長180cm前後、レオンとほぼ同じだが肩幅は広め。並ぶとどうしてもディフのほうが大きく見える。
  • 1980年7月27日生まれ。
  • 大型わんこ系熱血漢。22口径で撃たれた程度じゃ倒れない(場所にもよるが)丈夫な人。
  • 基本的に行動パターンは大雑把。
  • 最初はマメに料理する人、程度だったが今やすっかり料理上手に…。
  • 左の首筋にうっすら爆弾で吹っ飛ばされた時の傷跡が残っている。カバーするために髪を伸ばし始めたらどんどんのびた。
  • レオンとは高校時代にルームメイトとして出会って、無自覚のうちにひと目惚れしていたらしい。
    自覚して、告白、恋人になるまでには実に10年近い時間がかかった。
  • ヒウェルとは同級生で、レオンが卒業してからの一年はルームメイトになった。
  • 通称「マックス」(マクラウド→マックス)学生時代の友人や職場の同僚にはもっぱらこっちで呼ばれている。家族からは「ディー」。
  • 一旦怒ると手がつけられないほど大暴れするため、陰では映画になぞらえて「マッド-マックス」とも。
  • 歌はものすごく下手だがバグパイプの演奏は上手い。
  • 実家はテキサス州。
  • は警察署長。家族は他に
  • 父親も祖父も兄も警察官。
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↑月梨さん画、ディフ

ヒウェル

2008/06/07 15:23 人物紹介
  • ヒウェル・メイリール
  • フリーの記者
  • 黒髪、アンバーアイ、肌の色やや浅黒い、若干ツリ目ぎみ。身長180cm前後だがやせ形なのでひょろ長く見える。フレーム小さめの眼鏡愛用。
  • 1980年6月6日生まれ、血液型はAB
  • ちょい鬼畜入った変態さんだが、最近は発揮する場所がない。オティアにぞっこん。
  • ディフレオンとは高校が同じ。ディフと同級でレオンの後輩。
  • ウェールズ系だが5歳の時に両親を亡くして里子として育つ。里親とは親子と言うより友だち同士みたいな関係。
  • 一旦新聞社に就職。レオンからの情報提供で最初のスクープをモノにする。しかし「会社勤めって性に合わないんだよね」とフリーに。
  • 文章も書くが取材の際に写真もある程度自分で撮れる人。
  • 養父から貰ったライターと一眼レフのカメラを大事にしている。
  • 煙草はメンソール系、仕事が詰まってる時はエンドレス。
  • 料理はできない訳じゃないが食生活には無頓着。忙しい時はコーヒーは殺人的に濃いのを流し込みチョコバーだのスナックを常食にする。
  • カレッジのジャーナリスト養成コースに通う一方でバーでバイトをしていた。フリーになった直後も一時期はこのバイトで食いつないでいる。今でもカクテルと酒のつまみはちゃっちゃと作れる。
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  • そんな彼もかつては愛くるしい美少年で、聖歌隊で歌っていたこともある。
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↑月梨さん画。「証拠写真」

デイビット

2008/06/07 15:24 人物紹介
  • デイビット・A・ジーノ
  • 弁護士。ジーノ&ローゼンベルク法律事務所の共同経営者。
  • ウェーブの入った黒髪短髪、目はアンバー。肌もやや浅黒い。背は高く、ちょっとたれ目。初登場時38才。
  • 陽気でハンサム、女性に優しくハートは熱い。口も達者なラテン男。
  • 本来ダウィッド・アンヘル・ジーノと発音するのが正しいが、ファーストネームは英語読み。アンヘルは英語ではangel。
  • と二人暮らし。恐妻家。子供はいない。
  • どんな時でも奥様への感謝と愛の言葉は忘れない。人前ではとにかく奥様を褒める。
  • レオンのロウスクールの先輩にあたり、学生時代から何かと世話になっていた。新人時代のディフの持ち込んだトラブルを解決したこともあり。
  • 元々レオンがローゼンベルクの顧問弁護士のツテで手伝いに行っていたブラッドフォード法律事務所で知り合い、お互い気があったため独立時にレオンが出資することになった。レオンは事務所の看板に自分の名を出したくなかったようだがデイビットに押し切られた。
  • サッカーバカ。ひいきチームはリーベル(リバープレート/アルゼンチン)。本人曰く「俺は1/4アルヘンティーナだから」。

レイモンド

2008/06/07 15:24 人物紹介
  • レイモンド・ライト・ボーマン
  • ジーノ&ローゼンベルク法律事務所の弁護士。
  • 黒髪黒目。アフリカ系+アジア系混血。身長190cmオーバー。めがね。初登場時35才。
  • ロウスクールのデイビットの後輩でレオンとは同期。
  • 学生時代にはアメフトをやっていたが、試合中の怪我で目を悪くし、現在は左目の視力が低く眼鏡着用。その後はマネージャーをやっていた。
  • 基本体育会系。爽やか熱血。笑うと歯が光る。
  • 微妙に暴走しがち。
  • 声が大きく背も大きくがっちしているためか、子供によく泣かれる。子ども好きの本人はいたく気にしている。
  • トリッシュという恋人がいる。
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※月梨さん画「また泣かせてしまったぁっ!」

エリック

2008/06/07 15:24 人物紹介
  • ハンス・エリック・スヴェンソン
  • 警察の鑑識つとめ。CSIの捜査官。
  • 明るい金髪、毛質は堅めで短髪のツンツン頭。青緑の瞳、背は高め(186cm前後)、一見ヒウェルよりひ弱そうだが基礎体力はある。指細くてきれい、金属フレームの眼鏡使用、肌は白い。
  • 1983年3月14日生まれ
  • 仕事は優秀、ラボでの分析も現場での捜査もてきぱきこなすがプライベートでは反動が出るのかドジっ子モード全開。
  • ビーカーでコーヒー入れちゃうタイプ。普段着も白っぽい服装が多い。
  • 北欧系。すぐ赤くなる。(肌が白いから目立つ)色素が薄めなので日差しの強い季節は度付きのサングラスを使うことが多い。寒さに強く逆に夏場はつらいらしい。
  • 口当たりやわらかだがピンポイントで強引なバイキングの末裔。
  • 家族は両親と姉二人と巨大なノルウェージャンフォレストキャット)。両親と下の姉はサクラメントに在住、上の姉は『父祖の地』デンマークに嫁いでいる。
  • ゲイであることはカミングアウト済み。北欧のリベラルな気風を受け継ぐ家族には割とあっさり受け入れられちゃったらしい。
  • ディフの警官時代の後輩。
  • ディフが爆発物処理班に移動してからは度々協力して捜査にあたっていた。
  • 激務故に食生活は悲惨。下手すると二週間以上あったかいご飯無しで過ごすこともしばしば。
  • 警察犬のヒューイとデューイに時々温もりを分けてもらっている寂しい人。
  • センパイのために、時々ヤバい橋を渡っている気がする。
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 ※月梨さん画、エリック

オーレ

2008/06/07 15:26 人物紹介
  • オーレ・セーブル
  • 猫。メス。雑種と思われる。
  • 元の名はモニーク。母猫はエドワーズ古書店のリズ。父猫は花屋のバーナード。
  • やっと本編に登場したオティアの飼い猫。
  • 真っ白の中に、お腹の左側にひとつだけちょっとゆがんだ円形の茶色のブチがある。目はブルー。青い首輪に金色の鈴。
  • オティアへの誕生日プレゼントとしてサリーによりエドワーズさんの元から引き取られた。
  • オティアを「おうじさま」と呼び、大好きなおうじさまのためにがんばるお姫様。
  • オティアが側にいると大胆不敵。こわいものしらず。ほとんど大声では鳴かず、愛想もいい。しかしオティアがいないときには臆病な猫にはやがわり。
  • オティアの部屋と本宅を行き来する。探偵事務所にも出勤する。
  • エビが好き(でも食べさせてもらえない)
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 ※月梨さん画「最強のおひめさま」

ヨーコ

2008/06/07 15:30 人物紹介
  • 結城羊子(ヨーコ・ユウキ)
  • 日本で高校教師をしている。担当課目は歴史。
  • 高校時代、サンフランシスコに留学していた。ディフヒウェルとは同級生。現在もメールでやりとりしている。
  • 従弟のサクヤが留学中。
  • 豪快かつ剛胆、歯に衣着せない男気あふれる女性。ヒウェルは彼女を苦手としている。
  • 羊子→羊→メリィさんの羊、と言う連想で教え子から『メリィさん』と呼ばれている。
  • 実家は神社。年末年始はサクヤと二人で手伝いに駆り出される。
  • 神社にポチという名の鹿がいる。
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 ※月梨さん画、羊子。髪型を変えるとそのままサリーちゃんになります(多分)

メアリ

2008/06/07 15:34 人物紹介
  • メアリ・ルー・キンケイド
  • 花屋の店員だった
  • ふわふわの茶色の髪にハチミツ色の瞳の小柄な女性。
  • 911テロで婚約者と父親(どちらも警察官)を亡くし、再出発のためにサンフランシスコにやってきて警察署のそばの花屋「エリスおばさんの店」の看板娘に。
  • 2001/10〜2003/2までシスコに在住。その後カンサスの大叔母の元へ引っ越した。

ヨシカワ

2008/06/07 15:35 人物紹介
  • メグミ・ジュリア・ヨシカワ
  • ソーシャルワーカー
  • 50歳代の女性、ふっくらしてる。いつも落ち着いたスーツ。
  • 児童保護局のソーシャルワーカーの一人。現在双子の件での主な担当。
  • 特殊事情のため色々便宜をはかってもらっている。

アッシュ

2008/06/07 15:37 人物紹介
  • アッシュ・ボーモント
  • シリコンバレーの大会社の重役(候補)
  • 赤みがかった金髪、青い瞳。
  • ヒウェルディフの2年先輩。
  • 通称は王子。そのとおりに王子様タイプの美人さん。ヒウェルのはじめてのひと。

アマンダ

2008/06/07 15:40 人物紹介
  • アマンダ・マクラウド
  • 主婦
  • ゆるくウェーブのかかった赤毛、ヘーゼルブラウンの瞳、小柄。
  • ディフの母。おおらか&マイペース。夫と息子二人。のほうは結婚して孫ができた。
  • ディフの料理のレシピはほとんどこの人から教わったもの。