ようこそゲストさん

羊さんたちの遊卓

メッセージ欄

分類 【シナリオ】 で検索

一覧で表示する

【シナリオ2:壁の中の狼】

 
●いつから、何が起きているのか。
 初めて『壁の中の狼』が出現したのは一ヶ月前。
 満月を挟んでの五日間、村を囲う防護壁の中で、夜、殺戮が行われた。
 具体的には最初の襲撃が行われたのが月齢12の夜。以後13、14、15と続き、16の夜を最後にふっつり止んだ。
 家畜は肉の一部や内臓を食われているのに対し、何故か人間は食われていなかった。
 止めを刺さず、執拗に『痛み』の鋭い部分引き裂くそのやり口は、まるで殺すのを『楽しんで』いるようだった。

 上記の情報は、特に判定を行わなくても「集落の住人から話を聞く」ことで得ることができます。
 月齢については、〈占星学〉の技能判定を行わせてもよいでしょう。

●月齢とPCの来訪時期
 PCが始めて集落を訪れるのは、サンプルストーリーでは『月齢11の日の昼間』に設定されています。PCが集落に一泊した翌日から、『壁の中の狼』の襲撃が始まります。
 実際にセッションを行う際、GMは自分のシナリオの設定に合わせて日程を適宜調整してください。
 ポイントは『PCが集落に到着して、何日後に狼の襲撃が始まるのか』はっきりさせておくことです。
 もちろん、襲撃のあった夜の翌朝等、襲撃期間の真っ最中に到着することにしても構いません。その場合、より緊迫した状況が展開されることでしょう。

●狼の正体
 狼の正体は若夫婦の夫です。(理由は後述)
 激情に駆られて殺していたのは最初のうちだけ。今の彼にとって、殺すことは気晴らしであり娯楽になっています。
 集落の他の住人はまだ気付いていませんが、妻は知っています。
 GMはこの事実を踏まえた上でNPCを動かしてください。


■手がかり
 GMは以下の手がかりを、NPCへの聞き込みの答えとして。あるいは、技能判定の結果として伝えてください。
 聞き込みを行う場合は【知性】ないし【魅力】の能力判定。
 情報収集に役立ちそうな技能は〈愛嬌〉〈説得〉〈誘惑〉等。
 その人が言っていることが、果たして嘘なのか。本当なのか(少なくとも当人はそう信じている)、あるいはただの噂の伝聞で、本人もそれが真実かどうか確証が持てないでいるのか? 判別するのには〈仮面舞踏会〉が有効です。
 いずれの場合も、難易度は『2』です。

(1)夫妻が集落に引っ越してきた時期と、狼の出た時期がほぼ一致している。
(2)夫はエルルタンタの生まれで、毛織物の職人だ。この集落でも織物の工房で働いている。腕は良いが無口で気難しく、人付き合いは良くない。

(3)夫が、因縁をつけてきた与太者の腕をあっさり折った事がある。酒場で、しかも酔った上での喧嘩だし、悪いのは向こうだから大事にはならなかった。

(4)夫婦はここに来るまでに、ほぼひと月に一度の割合で引っ越している。(以前、夫妻の住んでいた村の住人、船員、行商人、旅芸人、乗り合い馬車の御者等、村や町を渡り歩く人間からの情報として)

(5)夫妻の引っ越してきた場所と、狼の出現場所はことごとく一致している。(4に同じ)

 上記の手がかりはほんの一部です。
 サンプルストーリーも参考にして臨機応変に情報を与え、PCを『事実』に導いてください。

次へ→【サンプル2:思い出は甘く真実は苦く】

【シナリオ1:はじめに】

 この記事は、TRPGバルナ・クロニカ用のミニシナリオとサンプルストーリーを組み合わせた構成になっています。
 シナリオ部分は極力、記述をシンプルにし、冒頭からラストシーンに至るまでデータを時系列に添ってまとめるに留めました。言わば料理の『レシピ』です。

 サンプルストーリーは、実際にGMがプレイの中で読み上げたり、プレイヤーがPCを演じて喋った台詞、とった行動が『こうなりました』と言う例を、小説形式に仕上げています。
 たとえて言うなら、前述の料理のレシピを使った『調理例』『作ってみたレポート』です。

 しかしながら、サンプル小説の登場人物たちの取る行動は、必ずしもクレバーな展開ではありません。
 これは決して悲劇的、もしくは破滅的なプレイを推奨するためではありません。美化するためでもありません。「もっと上手くやれる」「自分だったらこうはしたくない」その気持ちを喚起するためです。
 本作は『経験を積んだ強力なPC』が『素晴らしいプレイ』をする『立派なお手本』ではないのです。

 シナリオ部分は既に2〜3回のセッションを経験したPC、3〜5人を対象として組み上げました。初期作成のPCのみで行う場合は、敵の強さを調節してください。
 場合によっては、キャラクター作成の際に使用する「主要技能修得の配分点7点」を1〜2点増やしても良いでしょう。
 長さは比較的短め。追加要素を加えてアレンジするもよし、称号獲得用のミニセッションと組み合わせて使うこともできます。
 PCの前設定は、GMの裁量で自由に決めてください。
 ただし、必ず『シナリオの舞台となる集落の「外から」やってきた来訪者』にしてください。元からそこの住人だったとしても、しばらく離れていて、久しぶりに帰って来たと言う設定で。自由度の高いシナリオですが、この一点は重要なポイントです。
 
《導入の言葉》
大荒野に点在する町や村は、ほとんどの場合、頑丈な『壁』に守られている。
その安全であるはずの『壁』の中に、『狼』が出た。
人々をあざ笑うかのように夜毎に殺戮を繰り広げ、ふっつり姿を消したかと思えば一月後に別の村へと狩り場を移す。
狡猾な獣の正体を見極め、殺戮の恐怖から集落を救えるか否かは、希望の灯火{ナジャ}たちの双肩にかかっている。
だが、彼らはまだ知らない。
切なくも甘い過去の思い出が、時には危険な枷(かせ)となる事を。
 
■GMへ
 上記はシナリオの雰囲気をプレイヤーに伝えるための文章です。あくまでこれは材料にすぎません。一字一句全てを読み上げる必要はありません。
《導入の言葉》に限らず、この記事ではシナリオの内容をできるだけ簡潔に記してあります。
 実際にセッションとして展開する際、プレイヤーにどのように伝えるかは、伝えたい事、強調したい事を取捨選択した上で『あなた』の言葉で語って下さい。

【シナリオデータ1:こんな事件が起きています】
●事件の概要
 人の住む集落がある。妖鬼や獣の侵入を防ぐ頑丈な防護壁で囲われ、日の入りとともに門は閉ざされる。
 だが一月前、壁の中に狼が出た。家畜が食い殺され、見張りに立った村人も殺された。ずたずたに噛み裂かれ、引き裂かれ、遺体は見るも無残な有り様に。集落の中では、秘かに疑惑と緊張感が高まっている。
「狼はどこから来た。もしや誰かが狼を壁の中に入れたのではないか?」

●疑惑の若夫婦
 村に最近越してきた若い夫婦がいる。
 一番の新参者である彼らを疑う向きもあるが、誰もはっきりとは口にしない。理由は二つほどある。
 妻が気立ての良い美人であること。夫がその外見からは想像もつかないほど腕力が強く、時折、激しい怒りにまかせて暴れる男であること。
 集落の人々は、妻に親しみを感じると同時に、夫を恐れている。
「女房は愛想のいい働き者だし、美人だよ。だが旦那は、何だか薄気味悪いねぇ。この間だって……おっと」

●どこを舞台にする?
 GMが設定した開拓村、基本ルールブックやナジャ・イストリカで登場した町や村などが考えられるでしょう。
 サンプルでは、牧畜の村アンヘイルダールを舞台にしていますが、サガルロンドのような都市を舞台にしても良いかも知れません。地下水路、細い裏道、治安の悪い裏町……都会にも狼の出没しそうな場所はいくらでもあります。ただしこの場合、犠牲となるのは人間(ザハールに限らず街の住民たち)がメインになる可能性が高く。家畜の襲撃と言うより、残忍な『殺人事件』の色合いが強くなる事でしょう。

●懐かしい人との再会
 PCのうち一人は、若夫婦の妻と過去に関わりがあります。
 彼女は今回のシナリオのキーとなるNPCです。詳しいデータは【NPCのデータ】をご覧ください。
 便宜上、彼女の名前を『メイガン』と設定しますがこれはあくまで仮の名前です。
 彼女を含め、GMは自由にNPCの名前を設定してください。可能であれば『関わりのあるPC』のプレイヤー自身に名前を決めてもらってもよいでしょう。

 2人の関係は、基本的にPCが異性なら「初恋の相手」、同性なら「親友」、どちらの場合でも「姉(妹)のように育った仲」。
 PCの種族、年齢によって「幼なじみ同士」「面倒を見ていた近所の小さな子」等、関係は変化するでしょう。
 ポイントは「親しくて」「憧れていた」「子供の頃に別れて今、再会した」相手であることです。
 一度過去のシーンに遡り、二人の「思い出」を実際にロールプレイするのもよいでしょう。
 一方的に「こう言う人だったんだよ」とGMから語りかけるだけで終わらず、プレイヤー側から「こんなことがあったんじゃないかな」等の自主的なリアクションを引き出せたら最高です。
 すかさずその設定に『乗っかって』ください。膨らませてください。
 ただしセッションの本筋を外れない程度に、ほどほどに。ここはさじ加減が大事です。 

次へ→【サンプル1:再会】