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羊さんたちの遊卓

月、影と遭う

  • はじまりの物語、2本目。
 
 
 それは「いつ」起きたのか?
  6「子どもの頃の」→1「あれは満月の夜だった」

 それは「どこで」起きたのか?
  5「いつもの帰り道の」→3「橋の上で」

 なぜ術師となったか
 1→1「祖父が」→6「アヤカシに取り憑かれた」「あなた(PC)に」
 →6「自分の力を信じることを告げて」→1「あなたの一族の宿命の歴史を教えた」
 
 

 この村ではいいことも悪いことも全て川からやってくる。
 汚いこと、いやなことは川に流し、水に沈める。
 川にかかる橋は、あちらとこちらの出会う場所。

 そいつは橋の上でずっと待ち構えていたのだ。自分が乗っかるのに都合のいい相手を。
 ずっとずっと知っていた、だから目を合わせないようにしてきた。
 なのに今夜、うっかり見てしまった。
 そして、入り込まれた。

「おじいさま……くるしいよ……たすけて……」
「ああ……ついにこの日が来たか」

 祖父はすっと空を指差した。
 藍色の夜空にくっきり浮かぶ丸い月。満月をすこぉし過ぎた十六夜の月。

「月よ、迷うな」
「己を信じよ」
「お前は月神の加護を受けた娘。欠けたる月、闇に閉ざされた月が再び輝くように」
「影を追え」
「影を祓え」

 祖父に続いて祝詞を唱える。自分の中に在る力を導き、一つの方向へ走らせる。

「神通神妙神力……加持奉る!」

 鈴の音とともに魔は消えた。

「よくやった……」

 祖父は微笑み、言った。

「兄を覚えているか?」
「あれも今のお前のように憑かれた。そして祓うこと叶わず魔にとられてしまったのだ」
「男は憑かれれば命を落とす。生き延びることは稀」
「だが女は退魔の力に目覚める。それが結城の家の宿命なのだ」
「それじゃ、弟はどうなるのですか。あの子も魔にとられてしまうのですか? いやです。そんなのは、いや!」

 そして彼女は術師となった。
 弟を守りたい一心で。

(月、影と遭う/了)

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