▼ #5「桑港悪夢狩り紀行」(前編)
もやもやとした闇色の霧の中心で、胎児のように丸まって眠っている子どもがいる。乾涸びた根がしゅるしゅるとまとわりついてゆく。今の彼に振り払う力はない。
高い場所にある寝室の窓の外、灯りに群がる虫のように『よからぬもの』どもが飛び回っている。何て数。
(でもあいつらは小物)
本体は別にいる。瞳を凝らし、横たわる距離と時間の向こうに揺らぐ真実を見据える。
フィルムの逆回しのように景色が巻き戻り、やがて見えてきた。最初にこの場所にやってきた『モノ』の面影が……。
飛び回るちっぽけな魔物どもの中に、ひっそりと立つ影三つ。
頭上にゆるく螺旋を描く頂く二対の角をいただき、やせ衰え枯れ木のように背が高い。裾がぼろぼろになった赤い長衣をまとっている。華奢な体格、腰はふっくらと丸みを帯び、胸元が盛り上がっていた。
(見つけた)
- 2006年12月の出来事。
- 日本の高校生二人組風見とロイ、ヨーコ先生に付き添われて(付き添って?)サンフランシスコに参上。
記事リスト
- 【5-0】登場人物紹介 (2009-08-16)
- 【5-1】兆シノ夢 (2009-08-16)
- 【5-2】あくまで普通らしい (2009-08-16)
- 【5-3】空港にて (2009-08-16)
- 【5-4】チェックイン (2009-08-16)
- 【5-5】あくまで普通らしい2 (2009-08-16)
- 【5-6】対面 (2009-08-16)
- 【5-7】出陣 (2009-08-16)
- 【5-8】対決! (2009-08-16)
- 【5-9】対決!! (2009-08-16)