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羊さんたちの遊卓

#5「桑港悪夢狩り紀行」(前編)

 
 もやもやとした闇色の霧の中心で、胎児のように丸まって眠っている子どもがいる。乾涸びた根がしゅるしゅるとまとわりついてゆく。今の彼に振り払う力はない。
 高い場所にある寝室の窓の外、灯りに群がる虫のように『よからぬもの』どもが飛び回っている。何て数。

(でもあいつらは小物)

 本体は別にいる。瞳を凝らし、横たわる距離と時間の向こうに揺らぐ真実を見据える。
 フィルムの逆回しのように景色が巻き戻り、やがて見えてきた。最初にこの場所にやってきた『モノ』の面影が……。

 飛び回るちっぽけな魔物どもの中に、ひっそりと立つ影三つ。
 頭上にゆるく螺旋を描く頂く二対の角をいただき、やせ衰え枯れ木のように背が高い。裾がぼろぼろになった赤い長衣をまとっている。華奢な体格、腰はふっくらと丸みを帯び、胸元が盛り上がっていた。

(見つけた)
  • 2006年12月の出来事。
  • 日本の高校生二人組風見とロイ、ヨーコ先生に付き添われて(付き添って?)サンフランシスコに参上。