▼ 【シナリオ4:真相】
何故、夫は人狼屍鬼になってしまったのか。
何故、妻は夫を庇っているのか。
2人のNPCが『そうしなければならなかった』理由と心情の動きを以下に記します。
GMはこれらの記述を踏まえた上で『妻』と『夫』を動かしてください。
なお、必ずしも、これらの事実はPCに対して全て明らかにされる必要はありません。
(1)夫は半年前に人狼屍鬼に噛まれて屍病で死に、人狼屍鬼になった。
(2)人狼屍鬼は知性ある不屍。
普段は精一杯本性を隠して人として、以前と変わらない暮らしを続けている。
生前の姿と意識を留めた夫を、妻は葬ることも拒絶することもできない。
(3)満月が近づくとともにに夫は人狼屍鬼の本性を現し、凶暴で荒々しい男になる。(酒場で絡んできた与太者の腕を折ったのも、そのせい)
怒りともどかしさ、苦痛と凶暴な本性が抑えられず、目に付く生き物を食い殺さずにはいられなくなる。
夫の凶暴化は月齢12の夜に始まり、月齢16の夜に終わる。
その期間は夜毎に変身して家を抜け出し、殺戮に走る。最初は妻を襲いそうになり、欲望を他の獲物にぶつけるために狩りに出た。
かくて『壁の中の狼』は出現した。
(4)夫の心情
自分はもう人間じゃない。死んでいる。考えて、感じて動いているのに、もう自分は以前の自分じゃない。真っ当な暮らしには戻れない。それを隠すために、妻に負担をかけている。苦しめている。
一方で、屍闇に深く染まるほどに、次第に別の感情がこみ上げるようになった。
「ちくしょう、どうして俺だけが!」
「他の奴も不幸にしてやる!」
そして彼は殺戮を楽しむようになった。完全に心が屍闇の支配下に落ちるのも時間の問題だろう。
(5)妻の心情
夫は妻を手にかけたくないから、外で狩りをしている。
妻もそれを知っている。だから夫を見捨てられない。必死で庇っているが、それだけではない。
かつて、彼女は「落ち着いた暮らしがしたい」と言う打算で求婚を受けた。安定した暮らしを維持するために夫は必要。だから彼を庇っているのだ。
この夫婦はどちらもエゴの塊です。
とっくの昔に失っている平穏な日々を、自分たち以外の「他人」を犠牲にして取り繕っています。
そのことを悪いとも思っていません。
浅ましく、情けなく、あざとい。
けれど、とても人間くさく、ありふれた心の動きなのかも知れません。
《人妻の誘惑》
妻は夫の秘密を守るため、自分と過去に関わりのあったPCを味方に引き入れようとします。
かつての絆(恋心、友情、親子にも似た愛情、懐かしさ)を利用して、浅ましく媚びを売って。
■具体的には『自分と過去にかかわりのあるPC』と二人っきりの状態で〈誘惑〉の技能判定を仕掛けてきます。
「お願い、見逃して。私たち他所に行くわ。もう二度とここには戻らないから」
■妻が判定に成功したら、仕掛けられたPCに【賢明】の心魂判定を行わせてください。
成功すれば、誘惑を振り切ることができます。ここで見逃すことはできない、と。
仲間の中に「輪舞の絆」を結んだPCが居る場合は【賢明】の心魂判定にプラスになるように修正を加えても良いでしょう。
(例1)「あいつは必ずやってくる」を適用。成功したらその場に登場する。
(例2)セッションに参加しているPCのうち、絆4以上のPC一人につき一枚、追加でカードをオープンできるものとする。
追加のカードは、誘惑されたPC本人、絆4以上のPCのどちらがオープンしても良い。
●刻印の現出
上記の修正を得てもなお、心魂判定に失敗し、当事者から真力の使用の申請も無く、『完全に失敗』してしまった場合は……
刻印が現出します。
PCは希望の灯火{ナジャ}の使命を思い出し、誘惑を振り切ることができます。しかしその一方で、夫妻に希望の灯火{ナジャ}であると知られてしまいます。
「そう。あなたは希望の灯火{ナジャ}なのね」
「あいつは敵だ! 俺を殺しに来たんだな! 妻を奪いに来たんだな!」
刻印の現出を目撃した場合、妻はPCたちをはっきりと敵と見なします。
夫はますます苛立ち、怒り狂い、凶暴になります。自暴自棄になり、夜を待たずに変身して襲いかかってくるでしょう。
妻が〈誘惑〉の技能判定に失敗した。
またはPCが【賢明】の心魂判定に成功した。
もしくは「あいつは必ずやってくる」に成功し、他のPCが駆けつけた場合は、刻印の現出は起こりません。
PCは自らの意思で、あるいは仲間の助力によって誘惑を振り切り、希望の灯火{ナジャ}としての使命を果たすことができます。
不用意に正体を知られることなく。
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