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羊さんたちの遊卓

【9-12】仕事始めのちょっと後

 
 市内某所では、巫女さん好きな青年二人がこんな会話を交わしていた。
 
「結城神社の巫女さんって、かわいいよな」
「ああ、めがねかけてる」
「そうそう、胸ぺったんこで」
「ちっちゃくて」
「黒髪きれい」

(ご祈願の時はあんなにキリっとしてたのに、ひっそり神社の裏でえくえく泣いてるんだものなあ………)
(胸ぺったんでも、乳が動いてても、可愛いものは可愛いんだ。あの笑顔に撃墜されて悔い無し!)

「……もーいっぺん行ってみるか」
「そうだな」

 思い立ったが吉日。
 新年のにぎわいも過ぎ去り、すっかり普段の静けさを取り戻した神社に出向いた二人はきょろきょろと境内を探し回った。
 
「いないな……」
「いないな」

 折しも、境内を掃除している神主が一人。

「あの人に聞いてみよう」

「すいませーん」

 参拝客に声をかけられ、三上は顔を上げた。

「あのー、この間居た、眼鏡の巫女さんは……今日はいないんですか」
「眼鏡の巫女さん、ですか」

(やれやれ、またですか)

 三が日が過ぎて以来、何度同じ質問をされたことだろう。まずは根本的な誤解を正す所からスタートしないと。

「二人いるのですが、どちらをお探しで?」
「えっ」
「ええっ」

 かたっぽ実は男です、とか。もう一人も多分、君たちより年上ですよ、とか……。
 肝心なことを教える予定は、無い。


(夢守り神社でおめでとう!/了)

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