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ローゼンベルク家の食卓

【3-11-5】甘やかすなと言われても

2008/05/25 3:51 三話十海
 寝室に入ってきたディフは何となく元気がなかった。
 と言ってもさほど深刻な状態ではない。犬がぴしゃっと叱られて、ちょっと耳を伏せているような。そんな感じだ。

「どうしたんだい?」
「ヨーコにしかられた……メールで。過保護すぎだって」
「彼女から見たらそうかもしれないけれど、そんなに気にすることはないよ」
「……そうか?」
「君自身が納得できないなら、ね」
「自分でもそうなんじゃないかなって思ってたから、かえってすっきりした」
「あの子達の経歴を考えたら、過保護でも足りないぐらいだけどね」

 拳を握って口元に当て、考えている。

「さすがに本人達が嫌がるようなことはできないけど、ね」

 こくっとうなずくとベッドに腰かけ、目を伏せた。

「多分……俺は……ヨーコほど強くないんだ」

 少し驚いた。彼が自分の弱さを認めるなんて、滅多にないことだ。
 昔からとんでもない負けず嫌いで、怖い物知らずで、意地っ張りで。相手が強かろうが決して後には引かずにがむしゃらに突き進む。そんな君が……。
 あの子たちが、君を変えたのだろうか?

「彼女は教師だろ? 教師は公平でないといけない。そしてたくさんの子供に目を配る。それと視点が違うのは当たり前だよ」
「うん」

 こてん、と肩に頭を乗せて来る。

「お前にも……よろしくって言ってた」
「遠い国にいても、すぐに連絡がとれるのはいいことだね」
「ああ……」

 ちらっと見上げてくるヘーゼルアイに、わずかにとまどうような色が浮かんでいた。

「俺をあんまり甘やかすなってさ。何でわかったんだろ?」

 ほほ笑んで、波打つ赤い髪を撫でた。

「それは大統領命令でも聞けないね」

 わずかに頬を染めながら、彼は嬉しそうに目を細め、体を預けてきた。
 全身の力を抜いて、安心しきって………俺の腕の中に。


(ジャパニーズ・スタイル/了)

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