▼ 【3-11-5】甘やかすなと言われても
寝室に入ってきたディフは何となく元気がなかった。
と言ってもさほど深刻な状態ではない。犬がぴしゃっと叱られて、ちょっと耳を伏せているような。そんな感じだ。
「どうしたんだい?」
「ヨーコにしかられた……メールで。過保護すぎだって」
「彼女から見たらそうかもしれないけれど、そんなに気にすることはないよ」
「……そうか?」
「君自身が納得できないなら、ね」
「自分でもそうなんじゃないかなって思ってたから、かえってすっきりした」
「あの子達の経歴を考えたら、過保護でも足りないぐらいだけどね」
拳を握って口元に当て、考えている。
「さすがに本人達が嫌がるようなことはできないけど、ね」
こくっとうなずくとベッドに腰かけ、目を伏せた。
「多分……俺は……ヨーコほど強くないんだ」
少し驚いた。彼が自分の弱さを認めるなんて、滅多にないことだ。
昔からとんでもない負けず嫌いで、怖い物知らずで、意地っ張りで。相手が強かろうが決して後には引かずにがむしゃらに突き進む。そんな君が……。
あの子たちが、君を変えたのだろうか?
「彼女は教師だろ? 教師は公平でないといけない。そしてたくさんの子供に目を配る。それと視点が違うのは当たり前だよ」
「うん」
こてん、と肩に頭を乗せて来る。
「お前にも……よろしくって言ってた」
「遠い国にいても、すぐに連絡がとれるのはいいことだね」
「ああ……」
ちらっと見上げてくるヘーゼルアイに、わずかにとまどうような色が浮かんでいた。
「俺をあんまり甘やかすなってさ。何でわかったんだろ?」
ほほ笑んで、波打つ赤い髪を撫でた。
「それは大統領命令でも聞けないね」
わずかに頬を染めながら、彼は嬉しそうに目を細め、体を預けてきた。
全身の力を抜いて、安心しきって………俺の腕の中に。
(ジャパニーズ・スタイル/了)
次へ→【3-12】バニラアイス
と言ってもさほど深刻な状態ではない。犬がぴしゃっと叱られて、ちょっと耳を伏せているような。そんな感じだ。
「どうしたんだい?」
「ヨーコにしかられた……メールで。過保護すぎだって」
「彼女から見たらそうかもしれないけれど、そんなに気にすることはないよ」
「……そうか?」
「君自身が納得できないなら、ね」
「自分でもそうなんじゃないかなって思ってたから、かえってすっきりした」
「あの子達の経歴を考えたら、過保護でも足りないぐらいだけどね」
拳を握って口元に当て、考えている。
「さすがに本人達が嫌がるようなことはできないけど、ね」
こくっとうなずくとベッドに腰かけ、目を伏せた。
「多分……俺は……ヨーコほど強くないんだ」
少し驚いた。彼が自分の弱さを認めるなんて、滅多にないことだ。
昔からとんでもない負けず嫌いで、怖い物知らずで、意地っ張りで。相手が強かろうが決して後には引かずにがむしゃらに突き進む。そんな君が……。
あの子たちが、君を変えたのだろうか?
「彼女は教師だろ? 教師は公平でないといけない。そしてたくさんの子供に目を配る。それと視点が違うのは当たり前だよ」
「うん」
こてん、と肩に頭を乗せて来る。
「お前にも……よろしくって言ってた」
「遠い国にいても、すぐに連絡がとれるのはいいことだね」
「ああ……」
ちらっと見上げてくるヘーゼルアイに、わずかにとまどうような色が浮かんでいた。
「俺をあんまり甘やかすなってさ。何でわかったんだろ?」
ほほ笑んで、波打つ赤い髪を撫でた。
「それは大統領命令でも聞けないね」
わずかに頬を染めながら、彼は嬉しそうに目を細め、体を預けてきた。
全身の力を抜いて、安心しきって………俺の腕の中に。
(ジャパニーズ・スタイル/了)
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