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とりねこの小枝

5.アメ玉なんかでごまかすな

2011/11/23 2:05 騎士と魔法使いの話十海
「ほらよ」

 かぱっと開いた口の中に、カロンと丸いものが放り込まれた。

「ごほうび」
「むぐっ」

 うめいた拍子に、もご、と舌の上で『ごほうび』が動く。
 甘い。
 蜂蜜や砂糖とは違った、材料を念入りに煮詰めて混ぜたまろやかな甘さ。
 かすかに混じる果物の酸味がさらに甘さを引き立てる。極上の果実酒にも似た味わいに、思わず声が漏れた。
 
「あ。美味い」
「そーだろ」

 にやにやしてる。ったく、アメ玉なんかでごまかされないからな!(美味いけど)
「フロウ、フロウ」
「何だ?」

 口をもごもごさせたまま手招きすると、素直に顔を寄せてきた。妙なとこで可愛いよ、お前って。
 何をしようとしているのか。気取られるより先に肩に手を置き、引き寄せて、背中に腕を回して逃げ場を塞ぐ。
 青黒いドロドロ万歳、体は滑らかに動いてくれた。欠片ほどの痛みも強張りもない。全く元通りだ。
 右手を首の後ろに当て、髪の毛をなで回しながら顔を寄せた。

「てめえっ」
「ごほうび、もらう」
「は?」

 きょとんとなった顔を間近で凝視しつつ、唇を重ねた。

「うぐっ」

 ころん、とアメ玉を入れてやると、呻いてとっさに押し戻そうとしてきた。すかさず舌を吸い上げる。

「う、う、ううっ」

 うろたえてる。可愛いなあ……
 がっぷり重ねた口の中、アメ玉を転がし合った。
 甘い。
 甘い。
 さっきよりずっと甘い。
 むさぼるほどに舌が絡み、唾液が混じる。夢中になって舐めた。溶けたアメ玉も混じってべとべとだ。
 背中を押さえていた手が自然と滑り降り、むっちりと肉付きのいい尻をつかんでいた。

「ん、ふぅーっ」

 今更じたばたしたって遅いよ、フロウ。この距離じゃあ逃げられまい。どうする?
 むぎゅ、と指に力を入れ、手のひらいっぱいに肉の感触を味わう。
 弾力のある尻肉が、指を押し返してくる。
 つくづくいい体してやがる。たまんねぇや。
 目を細める。
 あ、目、閉じた。見られるのが恥ずかしいのか。とにかくこれ幸いと、さっさとベルトを外してやった。こっちはとっくに全裸だ、脱ぐ必要もない

「う?」

 眉、ひそめてる。気付いたかな。さっさと脱がせてしまおう。ベルトは外れたが、さすがにズボンずり下ろすのに片手じゃきつい。
 頭を抑えていた手を離したら、キスから逃げられた。

「んべ」
「ぷっはあ、ダイン、ダイン、ダインっ!」

 胸板に手のひらが当てられ、押し返される。おかしいな。お前の両手、ずっと自由だったはずなのに。何だって今さら慌てるんだ。

「ダインっ!」
「何だ?」
「すっげえ、鼻息当たる!」

 そこかよ。じとっと目を半開きにしてにらみつけてやった。

「……口がふさがってるんだから、当たり前だろ?」
「そこまでたぎるか!」
「たぎるね。お前が相手ならいくらでも」
「即答かよ! あ、何脱がしてるかっ」

 遅いよ、フロウ。
 自由になった両手でさっさと足首までずりおろしてやった。ズボンも下着もまとめて。つるりっとむきだしになった太もも、尻、足の間にちょこんとうずくまってるナニまでじっくり見放題だ。
 この辺りは、肌に艶があってむっちり張り詰めている。密着させた俺の体からしたたる水滴が、フロウの肌の上で玉になって、ころころ転がった。
 いい尻だ。
 せっかくだから、直にもーいっぺん揉んでおくか。うん、ここで揉まないとか言う選択ないよな。

「ええい離せ!」

 伸ばされた手を、フロウはぴしゃりと叩いた。

「ったく、所構わず盛りやがって、この阿呆犬は! 油断も隙もありゃしない」
「……って言った」

 ダインはうつむいて、ぼそっとつぶやいた。低い声で。

「何?」
「まずは治療、お楽しみはその後って言ったろ?」
「……ああ」
「治療は終わったんだから、次はお楽しみの番だろ。ちがうか?」
「えー……そりゃ、まあ……確かに、店ん中じゃねぇし……」

 正直、むらむらしてないと言えば嘘になる。こいつの裸をじっくり見て。さんざんキスされて、なで回されて……

(だからって、一方的にあんあん鳴かされるのは性に合わないんだよ!)

 どうせなら、もっとじっくり苛めてやりたい。鞭でぶたれた事なんか、痕も形も残らないくらいにきれいさっぱり、消えちまうくらいに。
 誰が飼い主なのか、たっぷり教え込んでやりたい。その若くて逞しい体にも。真っ直ぐな心にも。
 ってな事を考えてる隙に……

「うぇっ?」

 ぺろっと舐められた。どこをって、半分やる気になってた股間のナニをだ!

「い、いつのまに……ってか何舐めてやがる!」
「ナニ?」

 ちょこんと首かしげて、あどけない笑顔で何抜かしやがるかこいつはーっ! ってか、人の見てる前でくわえるな、吸うな、しゃぶるなっ!

「あ、あふ、やめっ、ちょ、ダイン、ダインっ」
「やめない」

 ぺちょ……っと粘つく水音が響く。一番敏感な部分を握られたんじゃ、逃げることもできやしない。
 じっくり舐めろと教えたのは俺だ。こいつときたら、疑問も持たずに素直に覚えて。自分のされたことをそっくりやり返してくる。
 広げた舌で根元から竿を舐めあげて、袋をもみしだく。かと思えば、とがらせた舌先で尿道口をこじあけて……。

「う、うう、く、ふっ、あ、ひゃ、あん、あぁっ」

(嘘だ)

「ふぇ、あ、あん、はぁんっ」

(こんな声、俺じゃない。俺の訳がない)

 口に手を当てたが、とてもじゃないが抑え切れない。
 ダインが顔をあげた。口の周りをよだれでべたべたにしたまま、拭おうともせずに、にっと笑った。
 
「可愛いな……」

 ぬるぬるになった指が尻肉をかきわけ、ぬちょっと……後ろの穴に触った。
 ぱく、ぱくと魚みたいに凝縮と弛緩を繰り返す、物欲しげな肉厚の口に。

「いじってから舐めるか、舐めてからいじるか。どっちがいい?」
「好きにしろっ!」
「…………わかった」

 言ってから後悔した。緑色の瞳の奥で、めらっと情欲の炎が燃える。あっと思ったらうつぶせにされていた。とっさに風呂場の壁に手をついて、体を支えた。
 がっちりした手が腰に巻き付き、引き寄せられる。ずる……と壁に着いた手が空しく滑り、ダインに向かって尻をつきだす格好にされていた。尻の頬肉に指が食い込み、むちっと左右に広げられる。
 指か。舌か。どっちだ?

「んー」

 ……舌がきた。

「また……鼻息当たってるし……」

 返事もしねぇ。はっふはっふと余計に息を荒くしながら、ひだの一枚一枚を丁寧にめくりあげるようにして舐める。
 舐める。
 舐める。
 ちゅぷちゅぷと音を立てて、一心不乱に舐めている。

「く……は……っ。中年オヤジの尻の穴……必死になって、舐めやがってっ、ははっっ、何が楽しいん、だか、んっくぅっ」

 返事はない。
 代わりに唇がアヌスに吸い付き、ずぞぞぞぞぉおっと吸い上げられる。

「ひぃ、うっ!」

 きゅっと締まった穴に、ちゃっかり尖った舌先が潜り込んできた。

「て……めえ……しつこい……ぞっ、はぅっ」
「入れる前に、がっつり舐めてほぐせって、教えたのはお前じゃないか」

 どこまでくそ真面目なのか、この騎士さまは!
 確かに言った、だが限度がある! 入り口ばかり弄られて、奥が痛いほどきゅうきゅう締まってる。これ以上焦らされたら……。
 気が狂いそうだ。

「も、やめっ」

 さんざん舐められ、濡れて充血した尻穴が疼いてる。息がかかっただけで、背筋がのけぞりそうなほど。
 欲しいのは今、今なんだ。

「これ以上、待たすなっ」

 ごくっと、咽を鳴らす音がした。気配なんてもんじゃない。はっきりと音として聞こえた。

「わかった」

 ぐい、とまた体をひっくり返される。
 
「は、は、てっきり、後ろからずぶっと来るかと思ったぜ?」
「それじゃ、顔が見えない」

 壁にもたれかかって体を支えた。
 あー、ちくしょう、シャツもベストもぐしゃぐしゃだ。お湯だの、汗だの、それ以外にで濡れてる。これからもっと濡れるだろう。
 それなのにダインと来たら嬉しそうな顔しやがって、どうしてくれよう、この馬鹿犬は!

「顔が、見たい」

 壁に背中がぐいぐい押し付けられる。太ももがなでられ、持ち上げられ………足を広げられた。

「このっ、立ったまま入れる気かっ」

 思わず声が裏返った。

「心配するな。支えるから」

 さらっと言いやがった。実際、できるから困るんだ。

「馬鹿力……めっ」
 
次へ→6.待たせるな!
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