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とりねこの小枝

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2012年3月の日記

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ナデュー

2012/03/21 0:14 登場人物十海
 
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illustrated by Ishuka.Kasuri
 
  • ナディア・レイハンド・ブランディス
    • 焦げ茶の髪に金色の瞳、前髪に赤が一筋混じる、艶やかでつやっぽい美貌の召喚士。魔法学院で召喚術を教えている。
    • 知人に乙女ちっくな呼び名をつける悪癖有り。超の字のつく甘党で、召喚する者にはことごとくお菓子の名前をつけている。
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ハインツ

2012/03/21 0:07 登場人物十海
 
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  • ハインツ・ルノルマン
    • 黒髪に琥珀色の瞳、小柄でリスを思わせるはしっこい男。ダインと共に訓練を受けた同期生。ロベルトの副官として東方の交易都市に赴任した。
    • その後、共にアインヘイルダールに異動。何かと暴走しがちなロベルトに振り回されてる苦労人。
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【おまけ】銀色のしっぽ

2012/03/20 23:42 騎士と魔法使いの話十海
 
  • 拍手お礼用短編の再録。
  • ちっちゃいさんが住んでいるのはフロウの店だけではないのです。
 休みが終わり、ダインが騎士団の兵舎に戻ると。

「あん?」

 実用本位の殺風景な部屋に、ちょっとした変化が訪れていた。ふっさふっさと目の前で、銀色のしっぽがゆれていたのだ。
 磨き抜かれた槍の穂先にも似た色合いといい、さらりとした質感といい、とても見慣れたしっぽが。

「あ、先輩! お帰りなさい」

 振り返る青緑の瞳。大理石の女神像を思わせる端麗な顔立ち。
 しっぽの正体は、何のことない、後輩騎士のシャルダン・エルダレントだった。
 いかなる心境の変化かいつもは長くなびかせていた銀髪を、頭の後ろで高々と結い上げている。小馬のしっぽ……いわゆるポニーテールと言う奴だ。形の良い耳や、なめらかなうなじがはっきりと見える。

「どうしたんだ、それ」
「実は……」

     ※

 先週は何かと激務続きで、ダインとシャルダンは疲れ切っていた。
 二人の関係は世話役と新米。兵舎の同じ部屋で寝起きして、任務中も概ね一緒に行動しているから、果たす仕事も自ずと重なる。

 名にし負う西道守護騎士団が、蛮族の侵入や魔物の襲撃から辺境の開拓民を守るため、日夜盾と剣を取り雄々しく戦い続けていたのも今は昔の物語。現在の任務と言えば、損壊した建物や橋の修理、あるいは街道のそこ、ここに建てられた道しるべの点検、確認など。
 戦闘よりも、もっぱら設備の維持や修理と言った工事の比率が高い。
 たまに発生する戦闘にしたって、防衛が主体なのだ。
 決して自分たちからは仕掛けない。どれほど時代を重ねても、決してそれは変わらない。
 変えてはならない。

 先日の大雪の影響で、近隣の町や村ではあちらの道路にこちらの橋、あるいは建物の壁や屋根、納屋などが損壊していた。
 おかげで先週はその修理と壊れた建物や雪で倒れた立ち木の除去、はては未だ溶け切らぬ雪の塊をごりごり砕いて取り除いたりと、とにかく肉体労働が多かったのである。

 この種の任務では黒の機動力と『馬力』は重宝され、自ずと声のかかる率も増える。馬にお呼びがかかれば、必然的に乗り手も動かねばならない。
 何となればこの黒馬、主人であるダインと、その後輩たるシャルダンの言うことしか聞かないのだから。
 前者は何度振り落としても諦めなかったしぶとさと、頑丈さに妥協した結果として。
 後者は、高く透き通る声とその女神のごときたおやかな姿形故に。
 シュヴァルツ・ランツェこと黒は、女性(と一部の男性)にはすごぶる愛想がいいのだった。

 そんな訳で、勤務を終えた日の夕刻。エミリオの家にたどり着いたシャルダンは、汗まみれでほこりだらけで髪はくしゃくしゃ。重なる疲労と眠気から、ぼーっとしていた。

「ただいまーエミル」

 エミリオは魔法学院で学ぶ訓練生。既に中級魔術師の資格を獲得し、学院からほど近い所に小さな庭付きの一軒家を借りている。庭には、数々の薬草、香草と野菜が植えられていた。
 故郷にあっては果樹の女神の助祭を務め、自身も木属性の術を学び、なおかつ農夫の息子である彼にとってはごく自然な選択だった。

「お帰り、シャル」

 疲れていても、いや疲れているからこそ、一刻も早くエミルの顔が見たかった。
 兵舎で一眠りしてから、なんて考えは微塵も浮かばず、仕事明けにくしゃくしゃの制服姿でそのままやって来たシャルダンを、エミリオは当然のごとく普通に出迎えた。
 明日から休みなのは知っていた。休日はいつも二人で共に過ごすのだ。今日の夕方、シャルが来ることに何の不思議があるだろう?

「大丈夫か?」
「うん、そこまでダイン先輩が乗せてきてくれたから」
「そうか」
「早く自分の馬が支給されないかなー」

 シャルダンはまだ自分自身の馬を持っていなかったのだ。任務の際には、騎士団の共有の馬に乗っている。

「あこがれちゃうなあ。何から何まで全部自分で世話をして。任務に関係なく、好きな時に好きなだけ乗れる、自分だけの馬……いいよねぇ」
「ああ、シャルは動物好きだからな。で、風呂にするか。それとも先に飯食うか?」
「あー……」

 シャルダンは、そこで初めて自分のぼろぼろになった姿を見て、肩をすくめた。

「お風呂に入った方が、いいね」

 得たりとばかりに、ぱさっとエミルが清潔なタオルを被せる。
 湯浴みの仕度はとっくに整っていた。『保温』の呪文はこう言う時にこそ使うべきなのだ。

     ※

「ええっ、お前、あの後で風呂に入る気力あったのか!」
「はい。でもあったまったら、急にだるくなって来て……」
「……ああ、あるある」
「夕食の途中でうっかり眠ってしまいまして。かくっとうつむいた拍子に髪の毛がこう、スープの皿にぱっしゃんと」

 眠気>食い気。
 ここら辺ががさつな野生児と、女神のごとき美形の差なのだろう。

「もう、大変なことになっちゃいました」
「……主にエミリオが?」
「はい」

 スープが髪の毛や服に飛び散り、さすがにシャルも目を覚ます。
 事態が飲み込めずにぼう然とする銀髪頭を、エミルの大柄な手がわしわしと撫でた。

『ここは俺が片づけとくから。もーいっぺん風呂、入って来い』
『うん、ごめんね、エミル』
『気にすんな。それだけシャルが仕事がんばったってことだろ?』

 飛び散ったスープを拭い、服を洗い場に浸して。
 万事後始末を終えたエミルが戻ってみると、風呂から上がったシャルはテーブルに突っ伏してすやすや眠っていたのだった。

「うわー、そこだけ同じだ、俺と」
「で、翌朝エミルが結ってくれました」

 さらさらの銀髪を丁寧に櫛で梳かし、頭の後ろの高い位置で結い上げる。綿糸をより合わせた丈夫な紐で、きゅっとくくってできあがり。

『そら、できた。だいぶ動きやすくなったろ?』
『うん、ありがとう!』

 だが。自分で結って置きながらエミリオは慌てた。
 この髪形を選んだのは、単純に動きやすさを重視してのことだった。だがいざできあがると……
 普段は髪の毛に覆われていた滑らかなうなじが。形の良い耳が、解放されている。
 その眺めと来たら、単純に清々しいだけではなく、本来なら服に隠されるべき肌を見てしまったような。
 奇妙に艶めかしい背徳感を醸し出していた。

(うわあああ!)

 サイレントに絶叫しながらエミリオは紐を解き、再び結い直した。今度は首のすぐ後ろの、低い位置で。

『あれ、何で変えるの?』
『い、家にいる時はこれでいいだろ。楽だし!』
『うん、そうだね』

 熟した野イチゴよりも真っ赤になっている顔は、幸い、シャルからは見えなかった。

「だから、仕事中はこうしてる事にしました。動きやすいし、機能的ですよね!」
「そうだな。すっきりしてて、似合うぞ!」
「ありがとうございます!」
「馬のしっぽみたいで!」
「はい!」

 若い娘さんに言ったらヘソを曲げられそうな……下手すれば、グーで殴られそうな無粋な賞賛の言葉。だが、シャルダンはいたってご機嫌だった。

(ダイン先輩は馬が好き。だからこれは、最上級の褒め言葉なんだ!)

 げに、天然は天然を知る。

     ※

 実の所、エミルの家にも『ちっちゃいさん』は住んでいた。
 わんこ騎士と違って惨事に至らなかったのは、ひとえに相棒との体格差故のこと。

「しょうがないなあ、俺の騎士さまは!」

 ため息をつき、眉を寄せながらもほほ笑むと、エミリオは……
 シャルダンを抱きあげ、軽々とベッドに運んだ。お姫様でも抱くような体勢で、うやうやしく。
 おかげでシャルダンはテーブルで眠らずにすみ、結果としてミルクのお皿を蹴飛ばすこともなかったのだった。

「きゃわ?」
「きゅっきゅー」

 見ようとして、見えない。
 見えないけど、いる。
 ちっちゃいさんは、あなたのすぐそばに。

(銀色のしっぽ/了)

次へ→【12】ひなたぼっこ
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教えて?フロウ先生!2―力線と境界線―

2012/03/20 23:38 その他の話十海

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<教えて?フロウ先生2―力線と境界線―>

「魔法の種類については大雑把にだがこれで確認したな。
 それじゃあ次は、魔術や祈術に大きく関わる『力線』と『境界線』についてだ。」

「あ、力線は知ってる!どこにでも存在する、この世界を構成する純粋な魔力の流れの事…だったわよね?
 それに自分の魔力や詠唱で自分に使えるように『色付け』して使うのが魔術…って、お姉様に習ったわ。」

 ピシッ!とまたもや手を上げて答えるニコラにフロウは緩い苦笑いを浮かべて頷いた。

「あぁ、そうだな…さっきも言ったが、授業では先走るなよ?…お前さんの言うとおり、力線というのはこの世界を構成する純粋な魔力の流れだ。
 より大きな流れは『地脈』と呼ばれて、砦や城を作る際に重要視される。力線の強い所は基本的に資源が豊富だからな。
 力線そのものに属性は無い…そのままでも魔術に使えることは使えるが…効率良く魔術を扱うためには、
 発動体や呪文の詠唱を使って近くの力線を魔術に必要な属性に染めて利用した方が良いんだ。」

「へぇ…あ、じゃあ境界線ってのは?私それは初めて聞いたんだけど…。」

「『境界線』ってのは、精霊界や神界、魔界…とにかく『この世界とは別の世界』から漏れ出した魔力の流れだな。
 祈術を使う際に重要視される魔力だから、魔術メインで教える学校じゃあんまり触れることも無いだろう。

 この境界線が強い場所は『異界門』と呼ばれて…時たま召喚術なしで異界の生き物がこっちに流れてくることもある。

 というより、召喚術が人為的に境界線を束ねて『異界門』を作って異界の事象や生き物を呼び込む術なんだが…まあ、それはそれ。
 例えば俺みたいなウィッチ…魔神の神祈術を主に扱う場合、神界の境界線が強い場所だと安定して術を扱えることになる。」

「な、なるほど…つまり、この世界には独自の魔力で出来た『力線』と…異界の魔力で出来た『境界線』の二つの魔力の流れがあって…
 力線は魔術、境界線は祈術を使うのに重要…ってので、良いの?」

「上出来上出来…ダインの奴もこの位理解力あれば楽に教えれるんだけどなぁ…。」

 わしわしとニコラの頭をなでながらボヤくフロウを見るニコラも…フロウの呟きに思うところがあるのか、苦笑いを浮かべるのみだった。




「……ぶぇっくし!」

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教えて?フロウ先生!—魔法の種類—

2012/03/20 23:36 その他の話十海
 
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<教えて?フロウ先生!—魔法の種類—>

「あ~っと…じゃあ、まず基本的な事を確認するぞ?」

 そう告げるのは小柄な中年風貌…その顔には「どうしてこうなった。」とありありと書いてあるが…目の前でキラキラと目を輝かせる金髪の少女には通じない。
 そもそもの発端は彼女…ニコラ・ド・モレッティが勢い良く薬草店のドアを開けて入ってきたことから始まった。

「私、来月から魔法学院に通うことになったから、入学前に色々教えて!」

 護身用のコモンマジック…誰もが使う共通語で呪文を組んだ簡易魔術を一つだけ教えてから、自分を師匠と呼ぶようになった少女に、薬草屋の店主…フロウライト・ジェムルは頭を抱えた。
 しかし、頭を抱えても彼女が帰るわけでもないし、少女の頼みごとを無碍にするのも気が引けて…今に至るわけだ。

「まず、魔法には大きく分けると2種類に分類されるんだが…。」

「はい!『魔術』と『祈術』です!」

 己が続けようとした言葉を、シュパッ!と手を上げて先を埋める出来の良い生徒に、フロウは若干苦笑いをしながら。

「おう、でも授業中はそうやって先走るなよ?それじゃあ…具体的な違いを言えるか?」

「えぇっと…自分の魔力で直接干渉するのが魔術で…自分の魔力を別の存在に譲って、力を行使してもらうのが祈術…だったかしら。」

「ま、概ねそんな感じだな。それじゃあ、魔術と祈術にはそれぞれどんな魔法があるか、挙げてみな?」

 ニマリと笑って、悪戯に問題を投げてみれば、金髪の少女はそれを挑戦と取ったのか眉根を寄せて先よりも真剣に考え始め。

「えっと…魔術に属するのは、私が教えてもらった共通語魔法に、魔導語を使った魔導術、簡略化した魔導語の歌詞で歌う魔歌。
 祈術は、神様の力を借りる神祈術に精霊の力を借りる巫術。異界の存在を呼び出す召喚術!」

 少し考え込んだ後、これでどうだ!と言わんばかりにまくし立てる少女の回答に、少し目を見開いてからクツリと…教師役の男は目を細めて笑い。

「おぉ、良く覚えてんなぁ…他にも魔術には少し前から確立されはじめた錬金術って系統の魔術に、祈術には竜を信仰して行使する竜祈術があったり…魔法とはちょっと毛色が違うが、自分の体を魔力で変質させる錬体術ってのも、一応魔術の一種に入るさね。」

「へぇ…私の知らない魔法って結構一杯あるんだ…。」

「もしかしたら、俺たちの知らない魔法もまだどっかにあるのかもな。」

次へ→力線と境界線
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