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とりねこの小枝

7.こまったわんこ

2011/11/23 2:17 騎士と魔法使いの話十海
 
 ずっぷりと入れたまま、三度イってもまだダインは止まらなかった。
 何度目かの意識消失から戻ってくると、ちゅっくちゅっく乳首吸ってやがった。
 いつの間に脱がせたか。こいつ、妙なことばっかり覚えが早い。

「そんなに美味いか……俺の乳。吸っても何も出ないぞ……こら」
「ん……」

 べとべとになった口で人の口を舐め回して、キスしてきやがった。
 貪られる。
 貪られてる。
 上も下も繋がったまんま、抱き合って。ゆるゆると何度目かの頂上目指して登り始めた。
 
     ※
 
 翌朝。フロウはベッドから起き上がれなかった。肌の色つやこそ良いものの、毛布を首までずりあげて、ぐったりしたまま。ぎろり、とダインをにらみ付けた。
 一方、ダインは広い肩をすくめ、大きな背中を丸めて縮こまっていた。

「ごめんなさい」
「少しは加減しろっ」
「反省してます」
「見ろ。こんなとこまで痣になってやがる!」

 布団の上に出された手首には、つかんだ指の痕がくっきりと浮かんでいた。それを見てますますダインが縮む。

「……ごめんなさい」

 ぷいっと顔を背けて言い捨てた。。

「もう一週間、お前とはやらない」
「ええーっ」

 途端に、きゅーっと太い眉が寄り、目尻が下がる。背中を丸めたまま、普段の堂々たる気っ風はどこへやら。青年騎士は、雨の中に放り出された子犬みたいな顔になってしまった。あまつさえ、ふるふると小刻みに震えている。

「お前……そんなに俺とやりたいのか」

 こくっとうなずくと、ダインは表情を引き締めて。大きな両手で、フロウの手を包み込んだ。花か小鳥でも抱くように、そっと。

「今日は、一日、俺が世話するからっ」
「……腹減った」

 指先に唇で触れる。やっと温かさが伝わるほどの、つつましいキス。

「わかった、何か作ってくるっ」

 いそいそと台所に飛んで行くわんこを見送ると、フロウはごしごしと頬をこすった。かっかと火照るのを紛らわせるように。
 空気が揺れ、しなやかな生き物が舞い降りてきた。と思う間もなく手首にふわふわした羽毛と毛皮の感触が触れる。黒と褐色の猫がすり寄ってきた。

「ぴゃあ」
「しょうがねえとーちゃんだな、ちび」
「ぴぃ」
「よしよし。あったかいなーお前はー」
 
 ちびを抱えて、ベッドの中で丸くなった途端。ひたむきに貪るダインの顔が瞼の裏に。素直に快楽を伝える声が、耳の奥に。鮮やかに蘇り、うろたえた。

『可愛いな、フロウ』
『お前の中、すっげえあったかくて、気持ちいい』
『俺、お前となら一晩中だってやれるよ?』

 そして実行しやがった。
 何とも照れくさい。じわじわと胸の真ん中からくすぐったい波がこみあげる。

「やれやれ。ほんと、こまった馬鹿犬だよ」

(Good boy,Bad dog/了)

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