▼ 4.背中を預けてもいいのかな
2011/11/23 0:56 【騎士と魔法使いの話】
それが、薬草師フロウとの出会いだった。
愛してもいいのだと。
愛されてもいいのだと、彼が教えてくれた。
左目の『呪い』を才能だと言い、胸を張れと、うなだれる広い背中をどやしつけた。
その結果、ダインは変わった。
馬上槍試合の会場で、一人ぽつんとたたずむ少女の下に赴き、彼女の名誉をかけて戦った。
境界線を越えて、迷い込んできた異界の猫を拾いあげた。
己の後ろに在るのは、別の盾でもなければ、か弱き者でもない。別の強さを持った仲間なのだと。背中を預けてもいいのだと。
戸惑いながらも、少しずつ学んでいる。
そして……
フロウの言う所の『無自覚天然タラシ』が野に放たれた。
彼は夢にも思っていないだろう。
他ならぬ自分こそが、その封印を解いてしまったのだとは。
(了)
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