▼ 【3-9-3】ヒウェル出所前夜
三日間のヒウェルの出入り禁止も今日で終わりだ。
明日から夕食をいちいち運ぶ手間が省けるかと思うと清々する。
まったくあいつと来たら、ドアを開けて俺の顔見るたびに露骨にがっかりした顔しやがるんだ。
(何を期待していたのか。誰を待っているのか。あえて追求するまでもないし、したところでヒウェルが口を割るとも思えない。第一答えなんかわかり切ってる)
そんな事を考えながら鍋を洗っていると、携帯が鳴った。ざっと手をすすいで、水気をふきながら液晶画面を確認する。
当の本人からだ。
「どうした、こんな時間に………」
どこか、こう、別次元から聞こえてくるような声で『借りたいものがある』と言ってきた。
今日の分の夕飯はまだ届けていない。
あいつ、また一日飯抜きでぶっ通しで仕事してたな?
「かまわんぞ。何を?」
抑揚の無い口調で、呪文でも唱えるみたいに淡々と、必要な本や雑誌、ファイル名を挙げて行く。
「あー、その資料は事務所に置いてあるんだ」
少し迷った。
奴が事務所に来れば必然的にオティアと顔を合わせることになる。
明日はそれほど外に出る用事はないが、タイミングによっては事務所で二人きり、なんてことにもなりかねない。
「明日、午後一番で取りに来てくれ。じゃあな」
その時間なら、確実に俺も事務所にいる。
携帯を閉じて、ふと横を見ると……シエンと目があった。どうやら気にしていたようだ。
「……元気だぞ。ヒウェル。飯、美味かったって」
「………そう」
ほわっと顔をほころばせた。ほんの少しだけ。
「……明日、事務所に来るから……その……気が向かないなら、バイト休んでもいいって…オティアに伝えといてくれ」
「休まないよ」
「……そうか」
「うん」
「わかった」
今度は俺がほっとする番だった。
次へ→【3-9-4】俺は空気か
明日から夕食をいちいち運ぶ手間が省けるかと思うと清々する。
まったくあいつと来たら、ドアを開けて俺の顔見るたびに露骨にがっかりした顔しやがるんだ。
(何を期待していたのか。誰を待っているのか。あえて追求するまでもないし、したところでヒウェルが口を割るとも思えない。第一答えなんかわかり切ってる)
そんな事を考えながら鍋を洗っていると、携帯が鳴った。ざっと手をすすいで、水気をふきながら液晶画面を確認する。
当の本人からだ。
「どうした、こんな時間に………」
どこか、こう、別次元から聞こえてくるような声で『借りたいものがある』と言ってきた。
今日の分の夕飯はまだ届けていない。
あいつ、また一日飯抜きでぶっ通しで仕事してたな?
「かまわんぞ。何を?」
抑揚の無い口調で、呪文でも唱えるみたいに淡々と、必要な本や雑誌、ファイル名を挙げて行く。
「あー、その資料は事務所に置いてあるんだ」
少し迷った。
奴が事務所に来れば必然的にオティアと顔を合わせることになる。
明日はそれほど外に出る用事はないが、タイミングによっては事務所で二人きり、なんてことにもなりかねない。
「明日、午後一番で取りに来てくれ。じゃあな」
その時間なら、確実に俺も事務所にいる。
携帯を閉じて、ふと横を見ると……シエンと目があった。どうやら気にしていたようだ。
「……元気だぞ。ヒウェル。飯、美味かったって」
「………そう」
ほわっと顔をほころばせた。ほんの少しだけ。
「……明日、事務所に来るから……その……気が向かないなら、バイト休んでもいいって…オティアに伝えといてくれ」
「休まないよ」
「……そうか」
「うん」
「わかった」
今度は俺がほっとする番だった。
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