▼ 【3-9-1】夕食は四人分
まだかな。
シエンはさっきから、ドアの外が気になってしょうがない。
そろそろ食事の仕度が終わるのに、一向に来る気配がないのだ。
「今日は皿、四人分でいいぞ」
(えっ?)
ディフの言葉に思わず目を見開いた。
「ヒウェル……は?」
「あいつは今、出入り禁止くらってる。刑期は三日だ」
「オティアのせい?」
「オティアも関係ある。だが、今回はヒウェルの自業自得だ」
ディフは微妙に嘘をつく。
まったくの嘘じゃないけれど。それが、自分やオティアを守ろうとする思いから来るものだってことも、わかるようになったのだけど。
今みたいな言い方をするってことは、やっぱりオティアが原因なんだ。
うなだれていると、ディフが遠慮がちに声をかけてきた。
「シエン……………その………あー……」
「ヒウェルごはんどうするのかな」
「プロテインバーかチョコバーか、コーヒー。あとは……ヤニかな」
何だかどれもあまり美味しそうじゃない。三日間、そんな食事ばっかりじゃ栄養もかたよりそうだ。体によくないよ。
ちらりと今作っている夕飯を見る。
「………………これ、持っていっても……いい……?」
ディフはじっとシエンの顔を見て、それからほんの少しだけ目元を和ませた。
「そうだな。多分、余る。これ使え」
タッパーを渡してくれた。受けとって、料理をつめる。
メインのポークとキャベツのポッドローストも。カボチャのサラダも、きっちり一人分。スープは……さすがに難しいかな。
首をひねっていると、オティアが横を通り抜けながら一言、ぼそりと言った。
「甘やかすな」
「………」
しょんぼりとうなだれ、力無く手を降ろす。
一人分取り分けた夕食は、結局、持って行くことができなかった。
※ ※ ※ ※
ずっと、一緒だった。
二人で一人。お互いがこの世界で唯一の大切な存在。
同じものを見て。
同じことを思って。
同じステップで歩いてきた。
それは瞬き一つに満たないほどのかすかなゆらぎ。それでも確かにその瞬間、二人は別々の『一人』だった。
次へ→【3-9-2】代理でデリバリー
シエンはさっきから、ドアの外が気になってしょうがない。
そろそろ食事の仕度が終わるのに、一向に来る気配がないのだ。
「今日は皿、四人分でいいぞ」
(えっ?)
ディフの言葉に思わず目を見開いた。
「ヒウェル……は?」
「あいつは今、出入り禁止くらってる。刑期は三日だ」
「オティアのせい?」
「オティアも関係ある。だが、今回はヒウェルの自業自得だ」
ディフは微妙に嘘をつく。
まったくの嘘じゃないけれど。それが、自分やオティアを守ろうとする思いから来るものだってことも、わかるようになったのだけど。
今みたいな言い方をするってことは、やっぱりオティアが原因なんだ。
うなだれていると、ディフが遠慮がちに声をかけてきた。
「シエン……………その………あー……」
「ヒウェルごはんどうするのかな」
「プロテインバーかチョコバーか、コーヒー。あとは……ヤニかな」
何だかどれもあまり美味しそうじゃない。三日間、そんな食事ばっかりじゃ栄養もかたよりそうだ。体によくないよ。
ちらりと今作っている夕飯を見る。
「………………これ、持っていっても……いい……?」
ディフはじっとシエンの顔を見て、それからほんの少しだけ目元を和ませた。
「そうだな。多分、余る。これ使え」
タッパーを渡してくれた。受けとって、料理をつめる。
メインのポークとキャベツのポッドローストも。カボチャのサラダも、きっちり一人分。スープは……さすがに難しいかな。
首をひねっていると、オティアが横を通り抜けながら一言、ぼそりと言った。
「甘やかすな」
「………」
しょんぼりとうなだれ、力無く手を降ろす。
一人分取り分けた夕食は、結局、持って行くことができなかった。
※ ※ ※ ※
ずっと、一緒だった。
二人で一人。お互いがこの世界で唯一の大切な存在。
同じものを見て。
同じことを思って。
同じステップで歩いてきた。
それは瞬き一つに満たないほどのかすかなゆらぎ。それでも確かにその瞬間、二人は別々の『一人』だった。
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