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ローゼンベルク家の食卓

【3-13-17】★★刻印3

2008/06/13 3:55 三話十海
 ベッドの中で寄り添い、まどろみながら余韻に浸る。
 肩を抱き寄せ、赤い髪を撫でて顔を埋めた。微かに手錠の鎖が鳴り、ぴくり、と抱きすくめた体が震える。

「………レ……オ……ン」
「っ!」

 夢うつつにつぶやかれた一つの名前。そこににじみ出る愛しさに体中の血が沸騰し、目の前が赤く染まった。
 ベッドから引きずり降ろし、足元に叩き付ける。もうほとんど抵抗はない。
 外したベルトで滅茶苦茶に打ち据えた。

「ひっ、あ、や、ああっ」

 ぴしり、ぱしりと皮が肌を打つ独特の破裂音が響く。子どものような無防備な悲鳴とともに、真っ赤なミミズ腫れが刻まれて行く。

「あぅっ、ひぃっ、やめっ、うっ、あっ、あっ、やっ、痛っ、痛いっ」
「ああ、痛いだろうさ、痛くしてるんだからな!」

 手錠をかけられた両手で頭を覆い、海老のように体を丸めるのを容赦無く打ち続ける。

「お前は、俺だけ見てればいいんだ。俺のことだけ考えろ、他の奴のことは忘れろ!」
「い……や……だ……」

 激しくかぶりを振ると、奴は何かにすがるように宙に向けて手を伸ばし、かすれた声を振り絞って叫んだ。

「レオン……レオンっ」

 その顔めがけてベルトのバックルを振り下ろした。頬に一筋、赤い傷が走る。

「あぅっ」
「まだ言うかっ」

 うずくまる背中をなおも打ち続ける。皮膚が裂け、血が滲み出した。
 喉からほとばしる悲鳴が次第に小さく、弱くなって行く。

「いた……い………く…ぁ………ぅ……」

 それでもまだ手を止めない。
 止まらなかった。

「誰にも渡すもんか……誰にも……誰にも!」
「ぅ…ぅう……」

「ボス……」
「何……だ……邪魔するなと言ったろう!」
「いえ……そろそろ、時間が」
「あぁ?」

 したたる汗を拭い、足元を見下ろす。
 胎児のように体を丸めて震える虜の背中には、くっきりと己の署名が刻まれている。
 そうだ、こいつはもう俺の物なのだ。何を焦ることがある。

「………行こうか、マックス」

 うつろな瞳が見上げてくる。ぐいと髪の毛を掴んで引き起こし、キスをした。

「さあ、おでかけの時間だ」


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