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ローゼンベルク家の食卓

【3-13-16】★★★★刻印2

2008/06/13 3:54 三話十海
「よく我慢したな……えらいぞ。ごほうびをやろう。足開きな」
「うぅ、うっ」

 小さく首を振るが知ったことか。後ろから手を入れ、無理矢理内股を押し広げる。

「んんーっ!」
「今さら気取るな。尻を出せよ、ほら!」

 尻の双丘をかき分け、アヌスを露出させる。いい色してやがる……。
 さんざん可愛がられた後だ。充血がまだひいていないんだな。おそらくは中も。ってことは、いつもにも増して敏感になってるってことだよな……。
 弱々しくもがくのを押さえつけ、容赦なく後ろから貫いた。
 猿ぐつわを通して悲鳴があがり、苦痛に歪められた両目から涙がぼろぼろとこぼれおちた。
 注射器を取り上げ、ガラス瓶のクスリを吸い上げる。適量? そんなもん知ったことか。

「そら、たっぷり味わえ!」
「うっ、ううっ」

 針痕の残る血管にぶつりと突き刺し、薬液を送り込む。効果はてきめんだった。

「くぅ、う、うぅうっ、んーっ!」
「ああ……いいな……吸い付いてくるじゃないか……欲しかったんだろう? 気持ちいいんだろう? ……そら、前も弄ってやろうな」

 すでに堅くなりかけていたペニスを弄り回す。
 くぐもった悲鳴に切羽詰まった喘ぎが加わった。徐々に堅くなる手の中の熱を楽しみつつ、なおも弄っているとそのうち腰が揺れ始めた。
 もう押さえ切れないのだろう。

「そんなに……欲しいのか……いいぜ。たっぷり突いてやるよ……抉ってやるよ」
「んっ、う、うぅ、んっ、ぐ、ぅ、ふ、ぅ、んんっ」
「恋人以外のモノがそんなにイイか? 力づくで犯されて、よがり狂いやがって。たまらねえって顔してるぜ。心底呆れた奴だ……」
「んんっ」
「違うとでも言うつもりか、ええ? 俺のモノをずっぷり美味そうにくわえこんでるぞ? 腰までくねらせて。まったく救い用のない淫乱め」

 あらゆる防護壁をはぎ取られ、むき出しになった心の動きが手にとるようにわかる。

 涙がこぼれる。透き通った雫が汗に混じり、頬をつたい首筋に流れ落ちる。必死で否定しながらも、自分が快楽に溺れている事実から目をそらせない。
 クスリのせいだと逃げることすらできず、身を切られるような罪悪感に苛まれ、ローゼンベルクに詫び続けている。

(そうだ、お前はそう言う奴だ)

 いい顔だ……あいつの前ではいつもこんな顔を見せてるのか?

「そうか、泣くほど気持ちいいのか……」

 ゆるく波打つ赤い髪をつかんで引き寄せ、首筋の火傷の痕に舌を這わせる。そのまま舐め上げて耳をねぶり、合間にささやいた。

「この姿、ローゼンベルクに見せてやりたいよ……」

 絶望を音にしたら、きっとこんな声になるのだろう。逃れようにも、もはや精根尽き果てて、手足もロクに動かせないのか。指先がわずかに動き、空しくシーツの表面を引っ掻いた。

 だが、体は正直だ。与えられる刺激をことごとく飲み込み、淫らに応える。

「ああ、そうだ。奴が迎えに来たら全部教えてやろう。俺たちに可愛がられたお前がどんな痴態をさらしたか……いや、いっそローゼンベルクの目の前で犯してやろうか?」
「んっ、んん、んぐっぅ、うぅ……」
「おっと……そんなに締めつけるな……いやらしい奴め。どこまで淫乱な男なんだ。だれでもいいんだろ? お前の穴を埋めてくれる男なら……だれでも……だれでもっ」
「うっ、ん、ん、ん、んんーっ」

 虚ろな部屋の壁に、床に、汗ばんだ肉と肉のぶつかる音が響く。
 今、こいつの体の中では背中を侵食する熱と、容赦無く責め立てる俺の動きが暴れ狂っているはずだ。どんどん声が高くなって行く。
 しっかりした骨格を覆う引き締まった筋肉、その上を包むきめの細かい肌。
 美しいとさえ言える背中がよじれ、蠍の尾を持つ蛇が踊る。刻みこんだばかりの翼に血がにじみ、白い肌を染めて行く。あたかも蛇の毒針に犯されるように。
 ゆるく波打つ長い髪が乱れ、肩に、背中にこぼれて広がる。濡れた肌にへばりつき、幾筋もの不規則な赤いラインを描く。

 ああ、たまらない。
 この髪も、体も、骨のひとかけら、血の一滴、肉の一筋に至るまで……だれにも渡さない……離すものか。
 お前がどんなにローゼンベルクを愛していても。奴を呼んでも。今、お前の体は俺の手の内にある。深々と爪を打ち込み、魂の奥底まで刻み付けてやろう……俺の印を。俺の痕を。

「愛してるぜ、マックス……お前は……もう、俺のモノだ」

 首筋に浮かぶ火傷の痕に歯を立て、噛みしめる。ぐいと前を掴んで、容赦無くしごき上げてやった。
 喉の奥でひときわ高い悲鳴があがる。
 ガクガクと熱に浮かされたように不規則に痙攣すると、奴は俺の手の中いっぱいに精液を吐き出して。
 糸の切れた操り人形みたいに、がくりと崩れ落ちた。
 
「ああ。とうとう気絶しちまったか。気の毒になあ。……だが、あいにくと……俺は……まだ満足していないんだ……よ」

 突き上げる度にびくんと体が震え、後ろが締まる。意識を無くしてもこれだけ反応するなんて、どこまで感じやすいんだ?

 まったく、お前の体は男にとっては毒だよ。
 一度知ったら、二度と忘れられない。離せない。天使みたいにあどけない顔の下に、これほど淫乱な躯が潜んでいたとはね。
 さぞローゼンベルクに可愛がられていたんだろうな……奴も溺れたことだろうよ。

(手に入らぬものならば、いっそ自分で壊してしまえ)

 半ば閉じ、半ば開いた瞳からまだ涙が流れている。優しげなヘーゼルブラウン、だが焦点はどこにも合っていない。
 用済みになった猿ぐつわを外すと、うわごとみたいに小さく誰かの名をつぶやいていた。
 三音節の、聞き慣れた名前。
 ここには居ない男の名前を、くり返し何度も。何度も、切れ切れに。

「好きなだけ呼ぶがいい。もう二度と、お前をあいつの腕に抱かせたりなどするものか……そう……二度と、な」

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