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» 妖怪大全科 » date : 2004/03/01  
【データ】
著:佐藤有文
絵:古今東西の有名な絵がいっぱい(いちいち許可とってたらすんげえお金かかるわよきっと)
発行:秋田書店 ISBN4-253-00799-6 670円
ジャンル:こどもよう妖怪図鑑
B度:★★★★★

*****感想*****
 前回ご紹介した「百鬼夜行解体新書」の中でことごとく「これはウソっこよん」と突っ込まれていた佐藤有文著作の妖怪辞典。残念ながら大本命の「いちばんくわしい日本妖怪図鑑」は絶版で入手できず。(古本屋にあるこたああったがさすがに15000円は出せんかったわ)ダメもとで日頃お世話になってるネットの本屋さん、bol.comで検索してみたら……あったんですねえ。佐藤有文さんの本が!
 しかも、お値段はたったの670円。(送料込みで932円、コンビニ払い)
 思わず発注。
 で、今日、ブツが届いたのですが……。分厚い文庫本サイズのフルカラーの表紙を見た瞬間、思いました。「これだーっ」。
 そう、これこそかつて小学生時代に私が、イトーヨーカドー栃木支店で恐怖におののきながら立ち読みした本に他ならなかったのです。しかも「決定版」。初版は昭和55(1980)年、手元に届いたブツは平成5(1993)年。ロングセラーですね。よほどの人気作家でも、こうは行きませんね。あやかりたいもんです……が。
 中身、ほとんど変わってません。
 もう、すがすがしいくらいにいい加減。
 小学生の私を、これでもかと戦慄せしめた恐ろしい話の数々は、記憶のままに生々しく描かれていたのでございます。さすが決定版、あなどりがたし。しかし、月日は流れワタシも大人になりました。
 
 1ページごとに沸き起こるのは、全身を震わせるような感動と、ツッコミの嵐だったのでございます。
「まちがってる…」
「しない、しない」
「何か混ざってる、絶対、混ざってるよ」
 かくして全318ページを一息で読み終えた時は心地よい疲労感にぐったりしておりました。
 ああ。こんなもんで夜中にトイレにも行けないほど怯えてたなんて。何ていじらしいやつなんだ、小学生時代の私。
 その中で特に心を震わせた妖怪物語を御紹介しましょう。
 まずわ妖怪「こくり婆」。明るいうちは寺の床下に隠れているが、暗くなると抜け出して……「うどん屋のものを盗み食いする」ってあーた。
 さらに「二口女」。これは「まま子に食べ物を与えずいじめ殺した」まま母の因果応報話が有名ですが。さすが決定版は違います。「昔、食いしん坊の娘がいて他所の家の食べ物を盗み食いした。仙人がいさめたが反省もせず、もうひとつ口がほしいと答えた。そのとたん娘の頭の後ろにもうひとつ口が…」ってアンタこれ、そのまんま魔夜峰夫の漫画のパクリやないかいっ!(仙人のところは、死んだじーさんの幽霊に置き換えるのが正しい)
 龍の項目じゃあ「龍は神の使者だとも言われている」とかゆーアリガタイ解説に添えられてる絵はよく見りゃ釣り鐘に巻き付いて火ー吹いてる清姫の絵だし。もう、資料を ロクに調べもせず 気にすることなく、ただ奔放なインスピレーションのほとばしるままに書いたのがありありと判る素晴らしさである。
 しかも、後半に行くにつれてネタが切れてきたと見え、妖怪の性質が「人を食う(殺す)ザンニンな妖怪」か、「へりくつを言ってダダをこねる子供をさらう妖怪」のどちらかになっているあたりも見逃せないポイントだ。(しかし何ゆえヘリクツ。ヘリクツこねる子供に何か怨みでもあるのだろうか)
 日本妖怪ばかりではない。西洋妖怪も紹介している。相変わらずこの調子、いやさらに磨きがかかっていると言ってよいだろう。
 例えば妖獣ゲランゴ。「人や動物を見つけ次第引き裂いて殺す凶悪な妖怪だが死体は食べない」。好き嫌いはいかんぞ、ゲランゴ! それとも、もしかしてベジタリアンなのか?
 さらにネーミングからして素晴らしく脱力するやつがいる。その名も「投げすて魔人」。百メートルを超えるがい骨で、人の死体を家の中に投げ捨ててゆくと言う。ポイ捨てはいかんぞ、投げすて魔人!
 この辺はどー見ても、映画や宗教画を見て適当にでっちあげたとしか思えない。しかもこの調子で版を重ねつつ(しかもイラストや内容が書き換えられてる部分もあった。にもかかわらずいい加減度はそのまんま…何のための修正。)平成5年まで出版してるとは……。如何に著作権とゆーものの扱いが軽かったか伺い知れようと言うもんである。決定版、おそるべし。

PS:え……「日本妖怪図鑑」をもう一度読んでみたいんだけど見つからない、と言う方。
 こっちで充分です。
» category : 本のこと ...regist » 2004/03/01(Mon) 16:35

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