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★★★子羊めざめる

2009/02/14 3:02 GL十海
 
 どこから触ってあげよう。

 今目の前にいるこの子の体は降ったばかりの真っ白な雪。ひとかけらの疑いも抱かず無防備に委ねてくる。
 どこまで触れてあげよう?
 指がうずうずする。こっそり舌なめずりをした。

 焦ってはだめ。いきなり肉の悦びを刻み付けたらきっと壊れてしまう。(それも見てみたい気がするけれど)

 湯に温まり、マッサージで血行の良くなったうなじに指先を這わせる。

「んっ」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」

 まずはポイント一つ発見、と。改めて手のひらを押し当てて左右から肩のラインに沿ってなで下ろす。思った通り、いえ、予想以上だわ。
 極上の陶器さながらになめらかな肌……手のひらに吸い付いて来る。東洋系の子ってこれだからこたえられない。いつまでもなで回したくなる。

 翼の付け根にも似た肩甲骨の周囲を円を描いて撫でさする。目をほそめて心地よさそうにしている。
 
「あらあら、パンパンに張りつめてる。疲れてるのね」
「そう……かも。ハードスケジュールだったから」

 顔を寄せて桜色に染まった肌をじっくりと鑑賞した。キスの跡も指の跡もない。確かに彼女の肌身にはまだだれも『触れて』いないのだ……そう言う意味では。
 胸の奥が震えた。
 
「少し、下の方まで触るけど……よろしくて?」
「は……はい」

 肩から滑り降りて、脇腹を通りウェストに。さすがにくすぐったいのか身じろぎして体が逃げる。
 だめよ、子羊ちゃん。逃がさないわ。
 気づかないふりをして指に力を入れる。喉の奥で声になる前の悲鳴が肌を震わせている。

「くすぐったい?」
「ちょっと……」
「大丈夫よ。くすぐったいのは、気持ちいいの前触れだから。安心して……」

 ささやきながら片手のひらでぷりっと丸いヒップをつつみこんだ。

「あ」

 小さな声が浴室に響く。ヨーコはびくっとすくみあがり唇を噛んだ。

「ここにはわたくしたちしかいないわ。恥ずかしがらないで。自分の体の声に耳をかたむけていいのよ」
「で、でも、あ、や、そこはっ」

 シンシアは既に手を前に回していた。指の長いしっかりした手。筋肉質でありながら女性らしい丸みと柔らかさをそなえた手が、ささやかな胸を覆い尽くす。

「どうして? ここは女の体の中でも感じやすい部分なのよ。ほら」

 ゆっくりと手の中の弾力を確かめながらもみあげる。手のひらの中央にぽつっと堅い突起があたる。さらに入念にこね回した。

「あ……あぁ……」
「どんな感じ?」
「あ……よくわから……な…」

 きゅっと人差し指と中指ではさむ。腕の中のほっそりした体が生まれたての魚みたいにぴちぴちと暴れた。

「危ないわ。滑ってしまう……」

 ここぞとばかりに全身ですっぽり抱きすくめた。豊満な胸のふくらみが背中に押し当てられる。ヨーコの動きが乳房をこねまわし、暴れる振動がいい具合に刺激になる。シンシアは思わず愉悦のため息を漏らした。

「う……あ……なんか、背中に当たってるし……」
「ええ、当たってるわ。あなたの背中に……わたくしの」

 答える代わりに両手で彼女のその部分をつかみ、もみしだく。

「く……ん、あんっ」

 ヨーコの動きが微妙に変わっていた。逃げると言うより、もじもじと身をよじって、自分の手に体をすりつけている。

(あぁ……そうよ、それでいいの)

 ねっちりと甘い充足感に満たされながらシンシアは、ヨーコの動きに合わせて指先を、手のひらを蠢かせた。ふと思いついて意図的に自らの胸をこすりつけてみる。

「ひゃ………あ、んぅ」

(か、かわいいっ)

「気持ちいい?」
「あ……ん……なんか、柔らかいのに、むっちりしてて」
「そう……そんなに気に入ったのね?」

 くるりとひっくり返して正面から抱き合った。

「お好きなだけ触っていいのよ、ヨーコ」
「え……い、いいんですか?」

 すっかりとろけた瞳は悲しみの涙以外のものでうるおっていた。頬が上気して、息をはずませている。
 だれが想像できただろうか。さっきまでの慎み深い大和撫子が。少年のような清々しい笑顔が、こんなにも艶っぽい女の顔に変わるなんて。

(あなたと一緒にベッドに入っておきながら手を出さないなんて。まったく相手の男はどんな唐変木なのかしら。さもなければよほどの紳士ね)

「わたくしもあなたに触れたでしょう?」

 ためらう手をとって胸の双丘に載せる。

「これで、おあいこよ」

 背中に腕を回して引きよせた。

「んにゅっ」

 あらあら、ごめんなさい、ちょっとせっかちだったかしら?

 一瞬、ヨーコの体に力が入る。が、すぐにもふもふと顔をうずめてきた。

「わぁ……おっきいなあ。やわらかいなぁ……」

 甘える子猫のように小さな手のひらでなで回し、ほおずりする。

「いいなあ。うらやましい」
「そんなに?」
「はい」

 ああもう、この子ったらどこまで素直なんだろう! 思わず全力で抱きしめ、可愛らしいお尻をなでまわしていた。

「ふぇっ」

 こりっと堅くなった乳首が胸にこすれる。太ももの上に完全にヨーコが馬乗りになった格好になっていた。

「……あ……」

(あら?)

 ぴくん、と震え切なげなため息をもらした。どうやら期せずして一番敏感な部分を。未だ誰にも摘まれていない乙女の花園をいじってしまったようだ。
 当のヨーコは真っ赤になってうつむいている。

「はずかしいのね……いい傾向だわ」
「え?」

 おずおずと上目遣いに見上げてきた。

「はずかしい、は気持ちいい、の入り口なの。あなたの体はちゃんと愛されることを知っているし、答えることができるわ。心配しないで……」

 ふるっと身を震わせる。
 ヨーコの顔が見る間に安堵の表情にあふれて行く。堅く閉じていたつぼみがほころび、外皮に覆われていた白く柔らかな花びらがほころぶように。
 他ならぬ自分の手がもたらしているのだと思うと。

 たまらない。

 うなじ、肩、背中、ウェスト、ヒップ。両手でくまなくなで回す。好き放題触り回す。お湯が揺れ、肌をこする。それさえ刺激になるのか、胸の間からくぐもった快楽の喘ぎが漏れ聞こえる。
 心地よい振動が伝わって来る。

「気持ち、いい?」
「あ……う……うん……」
「どこが?」
「……っ」

 答えは知ってる、けれどあえて聞いてみる。わざと太ももを揺すって刺激する。ぽってりとしたスリットが開いて中に隠れていたもっと小さな、鋭敏な花芽が露になる。
 お湯以外のぬめりを感じた。
 
「く、う、うぅ」

 歯を食いしばってふるえている。強すぎる刺激にぎゅっと眉根を寄せて。

 さすがに指で触れるのは難しそうね……いくらなんでも『確かめる』範疇を越えていると気づかれてしまう。
 今だってかなりギリギリなのだから。

 そっと額にキスをして、またくるりと体をひっくり返して後ろから抱きすくめた。

「足を開いて、ヨーコ」
「え……で、でもっ」
「開きなさい。知りたいのでしょう? 自分が恋しい人を求められるのかどうか」
「う……うぅ」

 
 ベルベットのささやきが忍び込む。火照った耳を通り、初めて自分以外の手でもたらされた快楽にとろけた脳の中心に染み通る。


「最終的にどこで彼を受け入れることになるのか……知らないわけではないわよね?」
「っ!」

 そっと太ももを撫でられた。震えながらおずおずと足を開いてゆく……少しずつ、ゆっくりと。

「いい子ね……」

 泡立つ湯の中、自分の体がどうなっているか目に映ることはないのがせめてもの救い。それでも直視できず、つい顔をそらしてしまう。
 がっちり閉じていた膝が開き、足の間の肉の合わせ目がゆるみ、隙間ができる。

「くっ」

 お湯が触れる。それだけで全身がすくみあがった。

「触りなさい……」
「や、そ、それだけはっっ」
「そう、仕方ないわね」

 太ももを撫でていた手がしのびよる。
 
「だ、だめっ」

 慌てて自分の右手で蓋をした。

(あ)

 触っちゃった?
 
 離そうとしたがそれより早くシンシアの手が上からかぶさり、押さえられてしまった。

「そうよ、それでいいの。じっくりと自分の一部を感じなさい」
「でも………」
「心配しないで。ここ、お風呂の中なのよ?」
「あ……そっか……」
「どう?」
「ん……なんか、柔らかくなってる」
「そう……ちゃんと受け入れる準備が整っているのね」

 じわっと押さえ込まれる。手のひらが押し付けられ、びりっとした刺激が走った。

「っ!」
「どうしたの?」
「な、なんか、痛いような、むずがゆいような」

 ふっと耳元に息を吹きかけられた。

「あ」
「すっかり勃っちゃってるのね。あなたのクリトリス」
「なっっ」

 頭の中で八尺玉が炸裂した。
 女性のクリトリスも基本的な仕組みは男性のペニスと同じで興奮すれば充血して勃起もすると、知識ではわかっていても実際に自分の体がそうなっていると感じてしまうと。
 他人に解説されてしまうと。

(ああ、なんか、すっごく生々しいっ!)

 強烈な羞恥心にすくみあがる。すぐにでも手を離したいがシンシアの手はいささかも揺るがない。それどころか手のひらの上からこね回してくる。

「う、う、あ、あう、うぅんっ」
「気持ちいい?」

 これが気持ちいいってことなんだろうか? 刺激が強すぎて、処理できない、理解できない。ただびくびくと体内の今までその存在を自覚したことすらない器官か脈動し、内側にむかって絞り込まれるように……疼く。
 響く。

 涙がこぼれた。

「く、う、んん」

 浴室に響く自分のうめき声を聞いてるだけでどうにかなりそうだ。

「気持ちいいのね……何て素直な体。もっと自信をお持ちなさい、ヨーコ」

 すっと手が離される。
 ほっと息を吐いて自分の手を離した。
 よかった………これ以上触られてたら、かなりやばいことになってた。今もじんじんしてるし。しばらく歩くのつらいかも……。


 なんてことを考えていたらいきなり両足をがばっと広げられた。

「あ、やっ」

 そのまま体の角度を変えられる。じゅわーっと足の間に強烈な水流が当たる。
 ジャグジーの噴き出し口が直撃している! さんざんいじり回されて愛でられて、すっかり熱くとろけた場所を。水圧で肉のひだがかきわけられ、さらに奥へと。

「くぅうう、んん、ん、うぅ、あ、あぅ、うぅ、うぅんっ」

 やめて。
 許して。
 おかしくなっちゃう!

 訴えようにも言葉が出ない。ただ大きな声を出さぬように必死になって奥歯をかみしめるのが精一杯。

「んぅ、う、くぅう」

 お湯の振動が。流れが。容赦なく強烈な刺激を叩き込む。逃げようにもがっしりとシンシアに押さえ込まれて逃げられない。
 かえって背中に彼女の柔らかな、それでいて張りのあるボディが押し付けられる。

 やばいよ、これ。
 気持ちいい……かも……。
 すごく。

「う、う、ぅうっ、んんっ」

 逃げようとするヨーコの動きが不意に変わった。
 右手でしっかりバスタブの縁につかまり、自分から水流に向かって体を開き、腰をくねらせているではないか。たどたどしい動きで、ためらいながらも。
 まだ恥じらいは捨てきれないのか、左手で自分の口をふさいで懸命に声を押さえようとしている。

 無垢な子羊がついに花開いたらしい。
 ほくそ笑むとシンシアはヨーコの体を押し出し、水流の源に近づけた。一段と強い波が彼女の中に叩き込まれ、抉る。
 もう押さえ込む必要はない。支えているだけで十分。

「ん……ぅぁ、ぁ、ぁ、ぁ」

 両手で小さな胸をもみしだき、仕上げにきゅっと乳首をつまみあげた。

「んぅうっ」

 びっくん。
 腕の中でイルカみたいに背筋をそらせて跳ね上がった。小刻みに体を震わせて……がくりと力が抜ける。
 昇り詰めたヨーコを抱きすくめ、頬に手を当てて振り向かせた。

 もう我慢できない。
 とろんとした瞳。おそらく意識は飛んでいる……生まれて初めて知った絶頂に耐えきれずに。
 わずかに開いた花のような唇を奪い、むさぼった。舌を差し入れてかき回す。できれば彼女の『花』をそうしたい所だけれど。

「ん……ふぅ……う……くぅ」

 ぴちゃぴちゃとくぐもった水音が響く。ジャグジーの音よりもなお強くはっきりと、重ねた唇、皮膚、骨、肉を伝わって。
 くったりと力の抜けた舌をすくいあげ、くすぐり、吸い上げた。密着した体の間で2人の乳房が重なり、こねられる。

「うぅん………」

 ふるっと身を震わせ、シンシアはささやかながらも快楽の波に身を委ねた。
 名残を惜しみつつ、ぴくぴく震えるヨーコの舌をなめあげながら唇を離すと……濡れそぼった唇からかすかにだれかの名前がこぼれ落ちた。
 耳をすませ、その幸運な男の名前を聞き取った瞬間、ひくっとシンシアの口元がひきつった。

(そんな、まさか、嘘でしょう?)

 メールで写真をやりとりするのはもとより、仕事中に抜け出してわざわざ空港まで迎えに行くような間柄なのだ。その可能性は否定できない。
 けれど。まさか。

(よりによってあの男だなんてーっ!)

 道理でそわそわしていると思ったら。
 何だってあの唐変木が、この子羊ちゃんとベッドで抱き合うなんてうらやましい状況に陥ったのだろう?
 しかし彼なら納得も行く。ヌードで寝間着の上だけ羽織ったこの子を抱きしめて一晩何事もなく添い寝だけで過ごすこともあろうと言うものだ。

(なんて………不憫な子……………)

 くったり力の抜けたヨーコの体を抱きしめ、頭を撫でる。またぴくっと震えている。

「敏感なのね、ヨーコ……Tunaなんてせいぜいサラダかサンドイッチに入ってるくらいで十分。自分がマグロだなんて二度と考えるもんじゃなくってよ?」

 こくん、と彼女はうなずいた。
 言ってる事が伝わったのか、それとも夢うつつなのか。


 ※ ※ ※ ※


 呼吸が落ち着くのを待ってシンシアは湯船から上がるとヨーコの体をタオルでぬぐい(ついでに細部までしっかり目に焼き付けて)バスローブを着せた。
 ゆっくりと、きわめてゆっくりと丁寧に。
 そして自分も身支度を整えてからおもむろにベルを鳴らしてスタッフを呼んだ。

「お水をいただける? 彼女、のぼせてしまったらしいの」
「はい。かしこまりました」

 運ばれてきた水をヨーコはぽーっとしたまま大人しく飲んでいる。表情からも、体からも、思い詰めたいやなこわばりが抜けていた。
 服を着てスパのロビーに戻るまで、ヨーコはひとことも口をきかなかった。
 シンシアが支払い手続きを済ませている間、所在なげに首にかけたペンダントをいじっていたが、やがて彼女の顔を見上げて……ほほ笑んだ。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 良かった。もう、大丈夫ね。
 
 エレベーターの前でヨーコと別れる。自分は下へ。彼女は上へ。
 まだちょっとふらついてるみたいだけどここに宿泊してるようだし……いや、多分ここだ。部屋を手配したのは他ならぬ自分なのだ。部屋番号もわかっている。帰り際にさりげなくメールアドレスを交換することにも成功した。

「また何かあったら相談してちょうだい」とささやくだけで十分だった。

 ふと気づくとこめかみの辺りに居座っていた強ばりも痛みも抜けて、シンシア・ナイジェルはすっかりリラックスしていた。

 さあて。休暇が明けたら、社長の尻をみっちり叩いてさしあげるとしようかしら。
 今まで以上に、びしばしとね。

(女豹とツナと子羊と/了)

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