玉テーブル・トーク・ロール・プレイングゲーム
(TRPG)って何?

 テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム(以下TRPG)とは、みなさんよくご存じのコンピューターRPGの御先祖にあたる遊びです。
本来、コンピューターのつとめるべき進行役を人間がつとめ(この役割の人をゲームマスターと呼びます)、パーティのキャラクターを一人につき一人が担当して遊びます(この役割の人をプレイヤーと呼びます)。
自分でやりたい、自分で書きたい、表現したい。言うなれば、まあ『目立ちたがり』で『出しゃばり』系の人に向いてる遊びとも言えるのだけど、人と協力する事ができないとぜんっぜん面白くなかったりする訳で。その辺のヌルさと奥の深さが魅了のアナログなお遊びと申せましょう。

 演劇と双六と飲み会を足してアルコールを抜いた感じ、とでも言えばいいかな?
 どちらかと言うと高年齢層向け。

私がはじめてTRPGをしたのは高校生の時でした。まっさかこの年まで続くとは思わなかったし、プロのシナリオ書きにまでなろうとは予想だにせず(^^; 実際、今はパソコンゲームのシナリオとか書いてたりする訳ですが、『プレイヤーがいる』ことを前提とした文章を書く際、ゲームマスターの経験がものすごく役に立ったのは確かです。

 将来、アナログ、デジタルを問わずゲームのクリエイターになりたいとお考えの方は1度でいいから、TRPGのゲームマスターを経験しておくことを強くお勧めしたい。やったからプロになれるってもんでもないし、違いもいろいろあるけれど、『人が遊ぶことを前提とした』ゲームシナリオを作り、それを遊んだプレイヤーの反応がダイレクトに返ってくる(何せその場で顔あわせてるのだもの)からです。

 ここで一つだけあらかじめお知らせしておきたいことがあります。
 もし、あなたがインターネット上にすっかり準備された完成品のゲームに受け身専門で参加したいと御考えなら…残念ながら、TRPGはあなたのリクエストにお答えできる遊びではない、と言うことです。

 このHPに書かれている内容は、あなたが遊ぶための「方法」を紹介、もしくは提供することであり、あなた自身が『何もしない』で一方的に遊ぶための場所や、機会を提供する事ではありません。

 って言うか、そもそも受け身オンリーな姿勢でTRPG遊んでも楽しくないんですよ……プレイヤーしてる時でさえ。
 コンピューターゲームはその辺り、痒いところまで手が届くようにシステムもシナリオも練られて作ってありますので、少なくともその点では安心しておすすめできるのですが……。
 このへんがアナログのアナログたる由縁であり、限界でもあります。
 それでも、もし、あなたが自分で考え、準備し、お話を作りたい、と願っているのなら…
 ようこそ! TRPGは、そんなあなたの願いをかなえてくれる、最高の材料です!



 TRPGでは、コンピューターゲームのプログラミングのかわりに、紙に書かれたルールに基づき、サイコロをふって乱数を発生させて話を進めます。当然、まとめ役も、キャラクタを動かすのも人間。
 語り手たるゲームマスターと演じ手であるプレイヤーの両方が想像力をふくらませなければ、ただサイコロを振って、数字的なデータをやりとりするだけのつまらない行為に終わってしまうのですが……。

 その気になれば、複雑なルールを使っていくらでもスリリングに、難しく遊ぶことのできるゲームです。現に、発生地であるイギリスやアメリカでは、明らかに大人、もしくは少なくとも中学生以上を対象にした難しいルールブックもたくさん発行されています。(日本でも最近その傾向が強いのですが、いまひとつ個々の判断が個人の良識や常識にゆだねられているケースが多く、別の意味で『中学生以上』でないと難しいかも知れません)

 TRPGの魅力として、架空世界の登場人物にそのまま自分がなりきれることが上げられます。ただし、一定のルールに基づき、3時間〜6時間と限られた時間の中で。現実世界との繋がりをばりっと切り離して喋り、動く事が求められます。
 別の人物を『演じる』楽しみと『数字を管理する』面白さが融合しているあたり、脳味噌の切り変えが難しいのですが。

 例えば、お子さん相手に読み聞かせをしている時。聞いている子供たちは、本の中の人物に『なったつもり』になっているのではないかと思います。(むつかしい言葉でこれを『投影』と言います)そうしてあたかも自分がその場にいるつもりになって、語られる情景を想像し、胸をときめかせる訳ですが……時にはそれだけでは飽き足らず、「僕だったらこうするよ」「あたしもそうする!」と、『自分も』お話の中で行動を起こしたいと感じ、口にする事がある。

 機転のきく語り部であれば、すかさずその場で彼、もしくは彼女を登場人物の一人として加え、以後の冒険の中で主人公に負けず劣らずの大活躍を演じさせることもできるでしょうが…実際、そう言う才能あふれる人ってのは非常に稀です。なにぶん、目の前の本に書かれているのは既に完成された物語りですから、それを壊さずに新たな要素(しかも聞き手の好みと気紛れ次第の変幻自在の!)を割り込ませようとすればどうしたって支離滅裂になってきちゃいます。
 
 ここから生じる「嘘っぽさ」も楽しいと言えば楽しいのですが…
 小学校の中〜高学年あたりから、それだと我慢できなくなってきちゃうんですよね(笑)
 自分の好きな物語りの中に加わるのであれば、ちゃんとその世界の法則にのっとって、正式に参加したい。気紛れなエキストラではなく、レギュラーとして入りたい。

 TRPGでは、ルールブックとサイコロによる乱数の発生によってその問題を解決しています。ここでのルールの役割は、違反者を取り締まることではなく、「その世界を構成する一員として」ちゃんと参加するための手引きであり、遊び手を現実世界から送りだし、シナリオの終了とともに再び送り返す『転移』の呪文なのです。

【追記 ゲームマスターについて】
 さて、今度はゲームマスターの役割についてお話ししてみましょう。
 ゲームマスター(以下、GM)は語り手であり、ゲーム内で起こる全ての出来事の管理者であり、プレイヤーの演じる人物の行動が、どんな結果をもたらしたかルールを参照して判定する審判です。さらに、学校の先生、そのへんの通行人、悪役、売店のおばちゃんなどありとあらゆる『プレイヤーが演じる以外の』人物を演じる役者でもあります。

 こんなこと言っちゃうと「わ〜むずかしい」「私には無理だあ」と尻込みしちゃうかも知れませんが、案外、読み聞かせに近い感覚でできちゃうものです。百聞は一見にしかず、論より証拠、実際にゲームの中で交わされる会話を抜粋してみましょう。
 
★ベルファール魔法学園の一年生、ドーファンとクリスは、拾った人形の持ち主を調べるために 占術の時間に占ってみることにしました。(先生の役をGMが担当しています)

テュレリー先生「では…今日のテーマは『来歴感知』です勿論、呪文でも同様の効果は得られますが…」
テユレリー先生「今日は純粋に占術によってその物の持ち主がどのような人で今、どこにいるのか…などを調べてもらいましょう…」
クリス:「・・・お人形。試してみない?」 
テュレリー先生「具体的には、皆さんのうち、誰かからこっそりと何かを提供してもらってそれを調べるのが理想なののですが…まさか、持ち主のわからないようなモノを教室に持ち込んでいるような生徒はいませんよね?」
ドーファン:「(いるところがオイシイよな・・)」
ドーファン:愛用のタロットカードを取り出して占いを始める
GM:ではボーナスこみで、感知判定を。 
ドーファン:#感知+2
ドーファン:2D(1+2)+感知力4+2=9
GM:…やる気ないだろ(笑) 
ドーファン:(しくしく・・・) 
クリス:水晶で占ってみます(笑)
GM:ではクリス、感知判定。 
クリス:#感知
クリス:2D(6+3)+感知力3=12
GM:高い(笑)上出来。 
ドーファン:(なんか悔しい(笑))

 と、まあこんな具合に会話で話を進めてゆくわけです。サイコロをふるのは、占いの出来具合いを調べるため。感知力と言うのは、ドーファンとクリスのカンの鋭さをあらわす能力。これで出目が高ければ高いほどよい結果が出る、とルールで決まっているわけです。(ちなみにドーファンが悔しがっているのは、占術は彼の得意課目だったからです。)
 
GM:でも並の上か。この人形の持ち主は女の子です。今いる場所は…墓地?
GM:とってもこの人形を大事にしてたみたい。年は8つ。 
ドーファン:「んー。8歳ぐらいの女の子で・・・今は・・・墓場にいる」

 結果をドーファンは自分の言葉として喋ることでクリスに伝えます。もちろん、クリス役のプレイヤーもGMの返答を一緒に聞いてる訳なのですが、キャラクターである『クリス』はその事を知らないからです。今度はクリスの水晶占いの結果。

GM:水晶玉に、『ぽっちゃん池』が浮かぶ。 
GM:水の中から水面を見上げているようなアングル。 
GM:すーっと沈んでゆき…手から人形が離れてしまう…届かない…
クリス:「・・・池ね。水の中みたい。あ、溺れてる・・・」


 ドーファンの時と結果が違いますね?これは、彼がカードを使って占っていたのに対してクリスがイメージを見る「水晶玉占い」をしているからです。
 このように、情報を与える場合も『キャラクターがどんな行動をとったか』想像し、それに応じたイメージを返してゆくことでその場にいるような臨場感を作り上げて行くのです。

 ここでGMが決めておかなければならないのは、占いの結果「どのような事がわかるか」、そしてその情報が話の中で「どんな役割を果たすか」です。この筋書きやもろもろの結果を書き留めておいたものを、便宜上シナリオと呼びます。別に本一冊を書き上げるほど綿密に作る必要はありません。お話の「起承転結」と、「どこに何がある」「ここに行くと何が起こる」かぐらいを簡単に書き留めておけば十分です。ただし、それを口に出す時は別。身ぶり手ぶりはもちろん、ちょっと大袈裟かな〜と言うぐらいになりふりかまわず表現してください。そのほうが盛り上がります。かっこつけたり気取るのはかえってマイナスです。ある程度ふっきれると自分でも気持ちよくなってきます…(こう、ね、頭のてっぺんがね、かぱ〜って開いた感じになってね)
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