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» 荒野のストレンジャー » date : 2004/10/30  
『お前は一体誰なんだ!』その答えは最後の1カットで明かされる

★1972年アメリカ/監督:クリント・イーストウッド/出演:クリント・イーストウッド ハ

イーストウッドと言えば西部劇。それもジョン・ウェインあたりと違い小汚い服でホコリだらけの馬にまたがり、ぬうっと観客の前に現れると相場が決まっている。不愛想で、金に汚く、ただ「あいつらよりはマシ」だから雇われる拳銃使い。この作品でもそのスタンスは変わらない。

高原の町ラーゴにふらりと現れたよそ者(ストレンジャー)。彼は酒場のならず者を抜く手も見せず鮮やかに撃ち殺し、何故か胸を撃たれても死ななかった。
(あ、中に鉄板入れてるんだろうって?いや、私も最初はそう思ったんだけどネ。)
実はこの町は以前、3人のならず者を雇って面倒ごとを収めさせていた。だが実権をまかされるにつれ、そいつらの行動は次第にエスカレートし、遂には保安官をなぶり殺しにしてしまう。町の住民は、それを知りながらただじっと見ていたのだ。安全な家の中から…。そして口をつぐむ事で「共犯となり、連帯感を強め、逆に3人のならず者を逮捕して監獄に送った。

よそ者」がやって来たのは、まさにその3人が出所してくる日だったのである。
「この町を護ってくれ。金も品物も自由に使っていい。ただし、あんた一人でだ。」
「要するに。家は焼かれたくない。女も渡さない。だが自分たちでは何もしたくない
と言うんだな?」
(このセリフ、是非、故山田康雄の声で聞きたかった)

★荒削りの優しさ

彼は何にも縛られず、自由で、しかし虐げられた弱者には優しい。ひどく荒削りな
優しさではあるが。
こんなシーンがある。支払いは全部タダだといわれ、町の雑貨屋に行く。折しもイ
ンディアンの親子が買い物に来ている
「お前らに売る品物なんてあるか!」
と追い出そうとする店主。
すかさずイーストウッドはつかつかと親子に歩みより、無造作に父親の手に毛布の
束を。二人の子供にはキャンディを瓶ごと押し付け、ちゃっかり最後に葉巻きの箱を
手にとり、慌てる店主にひと言のたまう。「タダだと言ったろ?」
(正確な翻訳はうろ覚えなんだが)
かっこいい。
も、無条件でかっこいい。
多少しわが増えようが白髪になろうが額が広くなろうがもぉ許す!許しますっあたし
ゃ一生ついてゆきますってなもんである。
…いっぺんやってみたいよな。侠気があるってのはこゆ事を言うんだろう。

★影より出て陽光に消ゆ
この映画のクライマックスは無論、3人のならず者とイーストウッドの対決するシ
ーンであるが、それは夜に行われる。最大の見せ場のはずなのに、イーストウッドの
顔はほとんど影だ。音楽も静かで、地味。マカロニウェスタンで定番の口笛の曲もな
い。この辺で観客は「なんか妙だな」と気付き始める。うすら寒いモノが背筋に這い
上がってきたころ、ならず者の一人が叫ぶのだ。
「お前は一体、誰なんだ!」
答えるのはただ一発の銃声。
そしてラスト。ただ一人、彼に協力的だった小男が尋ねる。
「あんた、一体なんて名前なんだい?」
「知ってるはずだ。」
言い捨ててよそ者は陽炎の中に消えてゆく。 小男は殺された保安官の墓碑を彫っていたのだ。

後に「ペイルライダー」としてリメイク、「許されざる者」にも通じる苦味を含んだ硬質の西部劇の逸品。
だが見終わってふと気付いた。もっと別の形でリメイクされてんだよ、これ!
その映画とは「処刑ライダー」。運が良ければ、レンタル屋さんの チャーリー・シーン のコーナーで見つかります。
(しかし何つうもの録画しとるんだい、君は。>弟)

今思えば「快傑ズバット」に近いものがある。イーストウッド、ほとんどしゃべんないけどさ(笑)
» category : Bの大箱(再録) ...regist » 2004/10/30(Sat) 11:11

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