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» 木曜ドラマ「ママチャリ刑事」 » date : 2004/09/29  
笑いのツボ心得た主婦版「裸の銃を持つ男」

★TBS系/1999年放映(木曜22:00〜)
 浅野ゆう子/田中美佐子/益岡徹/高橋克美
 ノベライズ(原作とは別)あり。
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334727751/qid=1096434548/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl/249-3908339-5155568

 放映時間があの「リング最終章」の裏番組に当たっていた不運な番組。宮崎じゃあ民放が二つしかないもんだから文字どおり一対一の勝負だがあまりに部が悪すぎゃせんか。ビデオ録画する場合もたいていまあ、「のろいのビデオ」を優先しますわな。でもウチじゃ、夫が恐いの苦手なもんですから、こっちを見てたりする。最初はたまたま「リング」を避けてチャンネルあわせたのがきっかけだったんですが、結構ヒロイモノでした。  

 小泉日向子は刑事の妻で二人の息子(中学生と小学生。)とマンション住まい。その隣に住む立花薫はバリバリのキャリアウーマン、日向子さんの夫の上司でもある。つまり、女刑事。こちらは夫と離婚して、小学生の娘と母子家庭してい るが何せ仕事が忙しいもんだから、ほとんど小泉家で飯を食ってると言うちゃっかりもの。

 ドラマはこのふた組の家族を中心に毎回、妙に所帯じみた事件を巡って展開する。コメディである。だがその笑いはむしろ乾いている。でもカサカサ、までは行かない。さらさら、ぐらいの感覚か。かろうじて現実に根っこをおろしながらもテンポのよいギャグがぽんぽん飛び出す所なんざ、「ホットショット」や「裸の銃を持つ男」に通じる。時事ネタを取り込みつつもきちっと起承転結を押さえてドラマとしても成り立ってるあたり、日本では滅多にお目にかかれない、一級のB級コメディの特質を見事に備えていると言っていい。何せ随所にちりばめられた「お約束ギャグ」で、思わず笑っちゃうんだから!恐怖や哀しみより笑いを演出する方が難しいのは、みなさま御承知の通りである。

「うちのカミさん、刑事物とか探偵ものが大好きなんだ。」
「はあ」
「『太陽に吠えろ』だろ、『金田一少年の事件簿』だろ、『名探偵コナン』だろ、
『踊る捜査線』だろ。ああ、あとあれだ。『鬼平犯科帳』」
(本編より)

★おそるべし、タダの主婦  
 主演のクレジットに浅野ゆう子のが先に出てるけど、この番組の主役は、実は田中美佐子演じる『専業主婦』日向子さんだと思う。何せこの人、タダの主婦だがタダモノではない。事件が起これば夫の携帯電話に勝手に出ちゃって警察より早く現場に駆け付ける。(着メロは懐かしの「太陽に吠えろ!」)
 あまつさえ警察手帳まで持ち出し、人の良い鑑識係員に自分は刑事だと信じ込ませては毎回、捜査情報を聞き出し、ちゃっかり証拠品の分析までやらせてしまう。ちなみに現在、第五回まで放映しているが件の鑑識くんは未だに気付く気配はない。
 そして聞き込み。日向子さんの情報源。それは井戸端会議なのだ…生半可な警察の聞き込みよりはるかに有益である。ちなみに日向子さんの好きなものはポケモンと鬼平さまと、金田一少年。家の中にこれでもか、とグッズがそろっているし、原作本もずらり。決してアップになる訳では無く、バックグラウンドにさりげなく置かれている程度なのだが、ちらっと写れば分かる人には一目瞭然である。(しかしいいのか?他局の番組だぞ?)

★「何であいつが鑑識を使えるんだよぉ」
 「先輩の奥さんって、スゴイ人なんですねっ」
 …そうじゃねえだろ。>若手刑事

 この苦労の耐えない日向子さんの夫。演じるは益岡徹、と言ってピンとこない人も、「御家人斬九郎の西尾さま」と言えばおわかりいただけるかと。
 斬九郎さまの遠縁の従兄弟で北町同心だか与力だかの、あの人である。「厄介な身内を抱えた公僕」を演じさせたら右に出る人、いないんじゃないか。
 まあ、二人の息子も日向子さんには振り回されっぱなしなんだからまだ孤独じゃないよな、うん。特に上の息子。テスト前に夕飯の支度やらされたり、セーターとられたり。よくぞグレずにすくすく育ったもんである。ちなみに息子から取り上げたセーターで母は『金田一少年』のコスプレをしていた。しかもそのシーンでは、セリフ回しといい、カメラアングルといい、くどいくらいにドラマ「金田一少年の事件簿」をパクっていた。

★ズッカー兄弟に続け
 タイトルに刑事とついているくらいだから、毎回事件が起こる。凶器はゴミバケツにカサに冷蔵庫など。いきなり生活臭が漂ってきそうではないか。
 あくまで殺人「未遂」止まりなんだが、現場にはきちっと白線でヒトガタが描いてある。のだが…わざわざ被害者がどう言う状況に陥ったかまでデフォルメして描いてあんだなこれが。例えば冷蔵庫に閉じ込められたフランス料理のシェフの場合は縮こまってガタガタ震えてる図柄。カサが針千本よろしく仕掛けられた落とし穴の中に落ちた進学塾の塾長の場合は、よくまあうまく「避けたなあ」と感心するようなアクロバティックな体勢。
 殺人現場になぜかエジプト壁画が描いたり、水の上にまで律儀に白線引いた「裸の銃を持つ男」のギャグをうまくアレンジしてある。ぶっ飛び過ぎない「日常ぷらす1」の可笑しさ。この微妙なサジ加減がたまらない。
 例えば主人公二人だが本名で呼び合ってるシーンは実は、ない。「咲ちゃんママ」「何よ、専業主婦!」実際、主婦って名前で呼ばれる機会、ほとんどないんだよな。

 まさに下り坂道ばく進するママチャリのごとくB級の王道突っ走ってます。
 ゲストも豪華なんですよ。たいてい被害者ですが。今まで佐野史郎さんが「裏口入学を平気で斡旋する」悪徳進学塾の塾長、京本政樹さんが女ったらしのフランス料理のシェフの役で出てました。
» category : Bの大箱(再録) ...regist » 2004/09/29(Wed) 14:14

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