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» 魔法の剣 » date : 2004/09/25  
■魔法の剣/1962/多分アメリカ
 今ならDVDで見つかるかも知れない…。

かろうじてカラー作品。良くも悪くも手作り風味満載の中世風冒険アドベンチャー。
邪悪な魔法使いロダックは、国王の娘ヘレンを誘拐。1週間以内に身代金を差し出さねばドラゴンのエサにするぞと王に脅しをかける。
そこで国王、大人しく身代金を準備すりゃあいいものを(しかし、それやったらそれで話が終わっちまわな)例のおふれを発令したりするのであった。いわく「姫を救い出した者には領地の半分を与え姫との結婚を許す」、と。これが3代も続けば国はかなり手狭になってそうな気がするんだがそのへんは追求すまい。
ここで登場するのが、両親亡き後、名付け親の魔女シビルに育てられたジョージくん(20歳)。彼は400年続いた騎士の家系の(うさん臭い…)由緒正しい末裔である。魔法の水鏡を通してヘレン王女を見守り続けていた彼は(それってノゾキと言わんか?)、引き止める養母を地下室に押し込め(ひでぇ)、魔法の剣と俊足の白馬、どんな武器も通さない鎧を身に付けさっそうと王の元に馳せ参じるのだった。お供は六つの国から集まった六人の騎士たち。どうもこいつら、魔女さんに石にされてたらしいんだが、そいつの魔法を解いて恩返しに同行させたらしい。(らしい、らしいと続くのはロクな説明がなかったためである)スペイン、フランス、イタリア、ドイツ、スコットランド、アイルランドで6カ国揃えるあたりがそこはかとなく大英帝国っぽい発想であるからして、ひょっとしたらイギリス作品なのかもしれない。
かくして勇者ジョージは姫に横恋慕するイカニモ悪人っぽい王の部下を入れて総勢7人でロダックの城に出発する。(名前、あったはずなんだが忘れた)しかし、その行く手には悪の魔法使いロダックの差し向けた7つの呪いが立ちふさがるのだった。

既に冒頭の部分だけで頭痛と目眩と苦笑の大旋風を巻き起こすこの映画。
それでもすごいなと思ったのは、実は特撮部分を最小限に押え、特殊メイクとカット割で中世っぽい暗さと不気味さとを表現していたからなんですね。ことに、捕われのヘレン王女(勝気系大人美女、しかもナイスバディ。)が魔法使いの城の中をさまよい歩くシーンは秀逸。(画面が暗いってのもあるんだろうけれど。)顔青く塗っただけ、お面つけただけ、ほんまもんのフリークス等、安上がりこの上ない怪人どもがぼそぼそ小声で喋ったり笑ったりしながらうろついてるのを見せられたんじゃあ、こりゃ「牢屋のがマシだ」と思わざるを得ませんぜ。

あと、呪いにやられてお供の騎士たちがバタバタ死んでくシーンが恐かった。( 落馬したと思ったら死んでた 最初の二人除く。)(いや、一応怪物に馬からたたき落されたんですが)
泡立つ沼にごぼっと一瞬沈んだな、と思ったら次の瞬間、目玉むいて歯ぁ食いしばったがい骨が浮かぶ。呪いに打たれて、全身でろでろに焼けただれて死ぬ(アップ有)。白い煙りに包まれたと思ったら次の瞬間には生首になって壁にかかってる、なんてのまである。何とも悪趣味で不気味なシーンが、実にさりげなくサクっと出てくるのですな。このへん、相手が美女だろうと容赦なく、身代金が届かずに、竜に食われてしまう王女様なんてのまでいた。(しかも名前がローラ姫…密かに受けた。)

ウウルトラマンと言うよりも、はやウルトラQや怪奇大作戦に近いノリである。かくして、悪の魔法使いの居城に辿り着く頃には、6人の騎士たちは全て倒れ、残るは勇者ジョージただひとり…と、ここまで書いていてふと気付いてしまった。ひょっとしてこれ、あれか?「七人の侍」中世バージョン?
からくも城に辿り着いたはいいものの、裏切り者の手で捕われてしまうジョージ。「裏切ったな!」「はっはっは、姫はこれで私のもの」んでも、この裏切った奴は次のシーンであっさりロダックに始末されてしまうのだった。(いわく、「人間とは約束をしないことにしてるんだ」だと。お茶目だね、ロダック!)一体何しに出てきたんだ、アンタ。
一方、地下室に閉じ込められていた魔女シビルは自力で脱出。水鏡でジョージの危機を知り駆け付ける。クライマックスは王女に迫るニつ首のドラゴンと勇者ジョージの一騎討ち。しかし画面合成の都合上、両者が直接ドツキ合うことはなく、勇者ジョージが馬で駆け回っちゃ剣振り回すシーンとドラゴンが火を吹くカット、お姫様が悲鳴をあげるカットが交互に入るのみ。挙げ句にドラゴンは 尻尾切られて あっさり死んじゃうのであった。(いや、まあドラゴンのミニチュアはよくできてましたけどね)

「そ んなっ私のドラゴンが人間ごときに負けるとはっ」ぼーぜんとするロダックから、魔女シビルは魔法の指輪を奪い取る。(何でもこれがパワーの源だったそうで…)ヤケになったロダックは「最後の七つ目の魔法は不死身の私が相手だあっ」とジョージに襲い掛かろうとする。
魔法使いが直接前に出るようじゃおしめ〜だよなあ、とか思っていたらこのおっさん、背後から豹に化けて襲い掛かったシビルにあっさりやられてしまうのであった。(よせばいいのにマント翻してかっこつけてるから…)
そしていきなり場面はかわり、勇者ジョージと救い出された王女ヘレンの結婚式。その最中にいきなり死んだはずの六人の騎士たちが 何ごともなかったかのように乱入 。素直に喜ぶジョージと王女、ロダックからぶんどった魔法の指輪を誇らしげに見せる魔女シビル。そして「は?」とあっけにとられる客を置いてきぼりにしたまま、画面にはジ・エンドの文字が現われるのだった。

やあ。久々にすごいもん見ちまっただよ。劇場公開で見てたらわし、暴れたかも知れねーっす。
これはもう、まるっっきり、 れれれ です。
れれれで、中世ファンタジーものをやったら、正にこんな感じ。
そうか、死んでたのはあれ、全部 スタント だったんだな。そうに違いない。
» category : 映画とTVドラマのこと ...regist » 2004/09/25(Sat) 02:50

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