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» ディープウォーターブラック » date : 2004/09/25  
■ディープウォーターブラック/米/TVシリーズ

目的地は地球。死に覆われた、見知らぬ故郷。

放映第一回では、記憶も不鮮明のまま6人が目を覚まし、訳も判らぬままに襲ってきた外敵に立ち向かうだけで終わる。目一杯、視聴者を引き付けておいて、そのまま「続きは来週ね」と打ち切ったわけだ。二回目で、ようやく彼ら自身も保存された遺伝子から再生されたクローンで、過去の記憶もオリジナル体のものを移植されただけ、しかも緊急事態が迫ったのでいきなり叩き起こされたため移植措置が不完全なのだと明かされる。
しかし、彼らには、のんびりと苦悩したり、自分探しをしてみたり、「どうせ俺はただのクローンだもんね」と自暴自棄になる時間は許されていなかった。(何せ30分番組だし)

敵は外側のみならず内側にも存在したのだ。
オリジナル体の上官、あるいや歪んだ理想を追い求めたかつての恩師。時間を経て動き始めた過去からの妨害を乗り越えてゆくうち、6人はこう、結論する。
「この記憶は僕のものじゃない。けれど、今感じているこの痛みは僕自身のものだ。」
失った妹の記憶をきっかけに、恩師の呪縛から解き放たれるザック。上官への盲信故に暴走しかけるも、逆に彼が自分を薬物で操っていた記憶を取り戻すことで正気に戻ったブレン。
時折ひらめく過去の思い出は、彼らの弱点であり、また逆に強さにもなる。
ま〜全員が(船に保存されてる遺伝子もふくめて)同じクローンなんだもん、一人だけ特権意識に浸ってる余裕もね〜わな。

自分たちと同じ使命を帯びた1号機と出会うエピソードもあります。しかし、1号機は妨害者の攻撃で無惨にも大破。遺伝子は全て失われ、たった一人生き残っていたのは、メンバーの一人、レブだけだった。元もとクローンですから、自分たちと同じ連中がもう1セットいてもおかしかない訳ですね。生き残っていたレブにしてみりゃあ、死んでしまったはずの友人たちとの御対面。「クローン」と言うガジェットを主人公の自己喪失と(マイナスであれ)特権意識の理由づけに使うのではなく、きっちりネタとして『生かした』演出に思わずぞくっとさせられた。
そんな訳で6人の主人公、ひよったり暴走したりもするけど、いずれも全員前向きです。一人がつまづいても、お互いに手を差し伸べたり、時にはガツンと一発お見舞いしたり、優しく受け止めたりしながら地球を救うため、日々適当に頑張ってます。見ててキモチイイです。

そう、実は特定の主役がいないんですね、この番組。全員が対等。(ただし、1話ごとにクローズアップされるキャラクターが1人いる。)この特性から、また、無造作に投げ込まれたSFネタの豊富さから、私この話のエッセンスを借用してTRPGのシナリオを作ったことがございます。
ニフティサーブ上で、それぞれ3度に別けて開催された「十海星道」と「十海SH」が、それ。ただ、もともとのDWBは未だに放映中なわけでして、結末がどうなったか、妨害者の正体が何だったのかは不明なので、そこだけは自分で作りましたが…。性質の違う2つのルール、2つのチーム、2隻の宇宙船で、細部は微妙に異なるものの、ほぼ同じ行程を旅していただいたのです。雰囲気も、メンバー構成もがらりと違うこの2チームが、最後の帰還に際して下した結論は奇しくも同じものでした。彼らは自分たちと異質なものを『排除』して己の楽園を築く事よりも、新たな開拓地に降り立ち、共存する道を選んだのです。

閑話休題。
話が進んでくると、地球から移民した人々と接触するエピソードも出てきます。けれど、皆、病気を克服するためや、過酷な移民先の環境に適応するために遺伝子を改造していて、もはやDWBの「過去のままの地球人」の遺伝子を持ったクルーたちとは共存できなくなっていて、結局彼らは孤独のまま地球に向かうのです。
果たして自分たちの任務は正しいのか、無意味じゃあないのかと日々怯えながらも、健気に前に進むのです。

スタートレック以来の「宇宙探検」ものの一つの進化形態と言ってよいでしょう。
(でも日本ではあまり受けないだろうな…)
» category : 映画とTVドラマのこと ...regist » 2004/09/25(Sat) 02:49

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