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» 口裂け少女さっちゃん(再録) » date : 2004/09/25  
■口裂け少女さっちゃん/原作:大塚英志/作画:大橋薫/角川書店
 ISBN4-04-85316-7/600円

最近、少女漫画を読まなくなった。
いい加減、そんな年齢でもなくなったのかな。いや、昔っから別マとかフレンドにはあまり心引かれず、花ゆめに出会うまでは「マンガ」そのものにあまり魅力も感じてなかったんだが。
むしろ青年マンガ系のほうが、面白いと感じられるようになってきている。でも今回御紹介する大橋薫の「口裂け少女さっちゃん」はASUKAコミックス系だから、いちおー少女漫画ってことになるのか?
そう、「口裂け少女」。あの一世を風靡した口裂け女の娘!と言う設定。である。

 この作品、小学生を主人公としているが、決して子供向きの魔法少女ものではない。どっちかって〜と、人間のほうにこそど〜しよ〜もないヤツが多かったりするし、たまに美少女が出たりするとこれが大概、いい具合に性格が悪かったり根性曲がってたりする。どいつもこいつも、心の中にきっちり弱さをかかえていて、私たちがそうである程度に自分勝手で、偏見をもっている。それ故、荒唐無稽な筋書きが、奇妙な現実味を帯びてくる。

 ただ、惜しむらく、1巻の最後に収録されている学級崩壊の話だけはツメが甘いと言うか、「それで終わってええんかい」的な展開で、ちと食いたりない。このネタについては同様の題材を「新カルラ舞う!」の3巻で扱った永久保貴一の視点のほうが鋭く、人間の本質を突いてると思う。(その分、救いもないのだが後味は悪く無かった。)

 マスクをしたかわいい女の子が、マスクを外すと…
口が、がばっと裂ける、まではまあ予想がつくとしよう。だが、よもや 体がぐるるんと裏返り 、お臓物がびろ〜んとなって さらに変型するとはっ。もう、大橋薫の面目躍如と言わんばかりの変身シーン。いっぺん四色カラーで見てみたいもんである。や、ど〜せやるならこれぐらいは徹底しなくちゃね!。

 さっちゃんは決して人前でマスクを外さない。(裂けてるから)行方不明になったお母さん、口裂け女を探して全国の小学校をさまよい、行く先々で人ならざる者が巻き起こす事件を解決してゆくのである。彼女は、妖怪のお母さんと人間との間に生まれたハーフなのだ。

 転校先の友だちと、仲良くなったころに悪の親玉が襲ってくるのはお約束。葛藤の末、マスクをむしりとり、醜い姿をさらすさっちゃん。

 けれども誰も彼女に感謝しやしない。するどころか怯えて逃げる。(そらまあ内蔵げっちょんげっちょんの、ぐろんぐろんですからぁ)決して人間に受け入れられないと知りつつ、それでも人の味方をやめようとしないさっちゃん。かっこいいだけ、見た目がキレイで可愛らしいだけの、よくある妖怪ハーフのもどきにゃあ決して出せない「異形の体に人の心」を持ってしまった少女の、悲壮なまでの健気さと、美学がある。

 それは、かつて改造人間であること、人造人間であること故に苦しみ、悩み、異端でありながらも孤独に正義を守った往年の石ノ森作品のヒーローや、永井豪のデビルマンを彷佛とさせます。
で、これ読んで私がどう思ったかと言えばただ一つ。「妖魔夜行やりてぇ」
» category : 本のこと ...regist » 2004/09/25(Sat) 02:25

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