:: back :: :: top :: :: next ::

 
» 「夢魔の森」「闇の大納言」(再録) » date : 2004/09/25  
■「夢魔の森」「闇の大納言」/小沢章友
   ISBN4-08-747140-3/集英社文庫/667円 (「闇の大納言」のみ)

ついこのあいだ、ハードカバーで買った本が文庫になってたりすると、非常にくやしい。定価で買ったプレステのソフトがベストになっていてもなんか悔しい。逆に、長いこと探していた本が、文庫になったときは嬉しい。人間、割と勝手なもんです。
今回はさいわい「うれしい」のケースでした。
集英社文庫から出た(って〜か今日、広告が新聞に出ていたから宮崎で見られるのは来週か)小沢章友の「闇の大納言」。前作「夢魔の森」がツボに入ってたので同じ流れにあるこの本もずっと読みたかったのだ。
中味は、と問われれば陰陽師ものですね、はい。ただし主人公は安倍さんでわなく土御門さんちの御一門。「夢魔の〜」では初老にさしかかった鏡明なる人物が主人公で、自分の一族にゆるゆるとまとわりつき、遂には命を奪ってゆく『鬼』の正体を探りだし、元を絶つのが大本の筋でした。
派手な呪術合戦と言うより何とも地味で、飾らず、まったく呪法や陰陽道を知らない人でも、するっと中に入り込める、目眩のするよな上質の『夢』物語りといった趣き。ただし、夢はかならずしも綺麗で清らかなものとは限らない。
短い話を一遍ずつ積み上げて長篇にしてるよな構成なんで、息切れもしない。逆に謎に近付くにつれていやでも読み進めずにはいられない。無論、陰陽道や民俗学、妖怪、平安時代が好きな人にも、詳しい人にもしっかり手ごたえのある内容です。ライトノベル系の「便利すぎる」陰陽師に食い足りなくなったら、ぜひ御一読あれ。薄明のなかでゆらぐ妖しい空気をぞんぶんに御賞味いただけます。
んで今度でた「闇の大納言」ですが、「夢魔の森」でちらちら顔を出していた少年、狼明が鏡明の後を継ぎ、若き陰陽師として活躍するんですが…彼、「夢魔の〜」での短い登場シーンだけでもかなり記憶に焼き付く個性の持ち主でした。日に焼けた顔で白い歯剥き出してコロコロ笑ってた男の子が、果たしてどんな陰陽師になるか…
楽しみです、はい。
書き終えてふと新たに沸き上がる不安。
「夢魔の森」の主人公、「鏡明」だったかしら、「典明」だったかしら
» category : 本のこと ...regist » 2004/09/25(Sat) 02:23

:: back :: :: top :: :: next ::

:: P column M-i-O ::