2012/10/26 17:53 【その他の話】
「んじゃ、次は木の神だな。これが終わればようやっと半分ってわけだ。」
「今更だけど結構多いのね、神様って…魔神の事をあんまり意識してなかったからそう思うのかしら。」
「かもな…。それじゃあまずは、聖木神リヒトラシルからだ。豊穣神とも呼ばれる女神で、文字通り果物や作物の豊作を司っている。
太陽の恵みだからリヒテンダイトの恩恵もあるから、農業とかやってる奴は大抵リヒテンダイトかリヒトラシル信者が多いな。
リヒトラシルが司るのはさっきも言ったが『樹木』…そして『品格』だ。聖印も、木の枝や木の葉を模した物になっている。」
「品格?……でも農業ってあんまり品格とか関係…。」
「いや、上流階級とかのそれじゃなくて、要は『自分の営みに自信と誇りを持って生きましょう』ってことだ。それは他人への気遣いに繋がるからな。
『心気高き者にこそ恵みあれ』……それが品格と樹木の女神リヒトラシルの教えさね。まあ、そういう教えがある以上、この女神様は凄くプライドが高いわけだが。」
「ん……どういうこと?」
「リヒトラシルの信者は、豊作を感謝するお祭りを収穫の時に良くするんだが、そこで供物をケチるとリヒトラシルの機嫌を損ねて次の年が不作になった、なんて良くある話で。」
「……い、意外と何ていうか……アレね。」
「まあ、そういう気質にほれ込んでリヒトラシル信者になる貴族もたま~には、居るんじゃねぇかね。……多分。」
「えっと、確か対になる神様は……師匠の守護神だったわよね?確か……」
「木魔神マギアユグド…寛容と草花を司る女神で、美華神とも呼ばれるさね。基本的に踊り子さんとかに信者が多いな。
教義はざっくばらんに言うと『より多くの人に愛されなさい。』『自分の好きなことを楽しみなさい。』って感じかね。」
「ふぅん……何か他の神様よりハードル低い感じ?」
「どうだろうな……少なくとも、マギアユグドの信者を彼氏にするのは止めといた方が良いぞ。」
「へ?……何で?」
「絶対に浮気するから。」
きょとんとした少女に小さく笑ってそうキッパリと告げると……なんとなく想像したのか少女の眉がキュッとつりあがる。
「どーいうこと!?」
「マギアユグドの教義は『花のようにより多くに愛される事』『より生を楽しみ、追求する事』……その最中にある不義理を悪としないのさね。
マギアユグドの信者同士で夫婦とかだったら、お互いに愛人作ったりしてそれなりに平和に過ごせるだろうけど…。」
「……何かそれ、ちょっとヘン。」
『ちょっとへーん。』
いつの間にか隣に居た彼女の使い魔と一緒になってむくれる少女の頭をポンポンと撫でながら苦笑いする。
「なはは……でもまあ、魔神の信徒ってのは基本的にどこか変なのは確かだな。ま…その辺は置いとくさね、価値観は人それぞれだからな。
あ、ちなみに…マギアユグドの聖印は押し花か、花を模したものさね。次は金の神だな。」
適当に言葉を濁しながら先を進める男は、彼女が魔神の信徒にちょっとした違和感を覚えた事を案ずるよりも…
自分の奉ずる女神の信徒には、娼婦や男娼が多い事を上手く伏せて説明できたことに安堵していた。
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