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とりねこの小枝

教えて?フロウ先生!14―精霊あれこれ―

2013/06/18 4:40 その他の話いーぐる
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<教えて?フロウ先生!14―精霊あれこれ―>

下町の薬屋の店内、丸椅子に腰掛けた少女……ニコラ・ド・モレッティがカウンターに何かを載せてぷにぷにと熱心につついている。
良く見ると、掌にはまるまっちぃ二頭身の小人が乗っかり、ぷにぷにした身体をつつかれながら、彼女の使い魔であるキアラところころきゃわきゃわとカウンターの上を転がって戯れている。
本来なら好物のミルクや甘いお菓子が無ければ見つかることすら厭い、隠れてしまう「ちっちゃいさん」……金の小精霊ブラウニーズや水妖精ニクシーと遊ぶニコラに、
店主のフロウはお茶を淹れながらその姿を見て苦笑を浮かべると、小さく息を吐き出した。

「やーん、やわらかーい。」

「ったく……ほんと、良い巫術師になれるわ。お前さん……そんだけ精霊とじゃれあえたら上等さね。」

「そういえばちっちゃいさんって精霊なんだっけ……金の精霊ブラウニー?」

「正確には、小精霊な。金の精霊はヴァルキリーだし。」

「ヴァルキリーって、御伽噺に出てくる戦乙女の?」

「そ……ついでだ、精霊についてちろっと話でもするかい?」

「するする!」

魔法絡みの話になると、俄然食いついてくる少女に小さく笑うが……ふと気付くと少女のひざの上でブラウニーや彼女の使い魔も興味津々のようだ。
しかしここは気付かない振り、あくまでニコラとの会話を聞かせてやるように振舞うのが、「ちっちゃいさん」と付き合うコツだ。

「まず、精霊には小精霊・精霊・精霊王の3つの階級に分類できる。そして属性が火水木金土聖魔の7種だから、少なくとも合わせて21種類の精霊が居るわけだ。
 で、一番下位に当たるのがいわゆる『ちっちゃいさん』……小精霊さね。それぞれフレイミーズ アクアンズ エアロス ブラウニーズ アーシーズ ピクシーズ レプラコーンズって呼ばれてる。
 多分ダインならしょっちゅう見えてるだろ。暖炉の中にフレイミーズが居たり、井戸にアクアンズが居たり……一番人間と身近な精霊なんじゃねぇか?」

「ふむふむ……木属性だけどエアロスなのね。」「なのねー」「きゃわわ……。」

少女と水妖精と小精霊が同時にうんうんと頷きながら聞いている姿にクスッと、一人と二匹に見えないところで笑みを漏らしながら、フロウは話を続ける。

「木の属性は風も含むからな。で、次が精霊…この辺りだと街中で見かけたりはそうそうないな。パンスベールとかの境界線が強いところならそうでもねぇが。
 順番にサラマンダー ウンディーネ ドリアード ヴァルキリー ノーム ウィスプ シェイドだな。この辺は聞いたことあるだろ?」

「あるある!御伽噺とか英雄譚にも出てくるし!ヴァルキリーがリヒテンガルド様の使いで英雄の剣に加護を与えたりとか!」

「ちなみに精霊は聖神魔神区別無く、その属性の神に仕えているからな。マギアフロッドの使いって時もあるぞ。んで、最後は精霊王か……。
 このクラスの精霊は、各属性の精霊界に繋がる異界門のある秘境に住んでそこを管理してるってのが通説だが……正直良く知らねぇんだよな。
 巫術師が神官が神託を受けるように夢とかで会話したことあるとかないとか、物語や伝承での資料で区分してるんだろうけど……実際見た奴居るのかね。
 どっちにしろ、このクラスの精霊の力を借りるってことは、従属神クラスの存在に力を振るって貰うのと同義だから、よっぽどの術者じゃねぇと無理だな。」

「そうなのね……貴方は会った事あるの?」「あるの?」「きゃわ?」

ニコラが問いかけるも、聞かれた事そのものが理解できていないのか、首を傾げるだけのちっちゃいさんのほっぺたをまたぷにぷにと触り、
ニコラは話を進めることにしたのかフロウに視線を向けなおす。

「それで、精霊王ってどんな精霊が居るの?」

「えぇっと、確か名前は……イフリート リヴァイアサン エント オーディン ティターン フェニックス フェンリル……だったっけな。
 この辺りはルーナやナデューのが詳しいだろうから、これ以上知りたかったらそっちに聞いてくんな。俺はあくまでウィッチだし。」

「はーい。」「はーい」「きゃわわ~。」

「そんじゃ、話はこれでおしまい。焼いてあったクッキーも冷めた頃だろうし、お茶も入ったし……寛ぐとしますかね。」

『やったー!(きゃわわー!)』

「……喜ぶのまで同時なのな。」
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