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とりねこの小枝

【3】he said.I say★

2011/11/23 1:38 騎士と魔法使いの話十海
  • ダイン×フロウ
  • 多分この二人はしょっちゅうこんな会話してるのでしょう。
 he said.

 —— フロウが言う。

「お前はもっと、真っ当な恋愛をした方がいいよ」

 ——— I say.

 俺が答える。

「してるよ。今。お前に!」

 月半分は一緒の家に住んで。(と言うか、もっぱら俺がこいつの店に入り浸りで)
 飯食って。キスして。毎晩一緒に寝てるのに(ヤるかヤらないかは俺のやる気とフロウの気分次第)。他のやつと恋愛しろとか、いったい頭のどこから引っぱってくるか、このおっさんは!

「もう、訳わかんねーよ!」 
「その方が幸せなんだ」
「俺の幸せは、お前といることだ」
「こんなおっさん相手に、人生捨ててどーすんだ」

 よせよ、そんな目で見るな。
 泣いてる子供を見下ろすみたいな穏やかな目。
 ほんの少し潤んで、目尻に笑い皺なんか寄せちゃって。ほお骨や鼻の周りにうっすら紅が浮いてやがる。
 何でこんなに色っぽいのか、このおっさんは。悔しいけど、どうしようもなく……滾る。

「もっといい恋できるだろうに」

 ちくしょう、顔が熱い。ガンガン、ごんごん、音がする。鉄板を叩き割るようなやかましい音。
 どこから聞こえるか、わかってる。外側からじゃない。内側から。俺の中からだ。
 むっちりした腕をつかんで、ひっつかまえて、むさぼった。
 ぽってり柔らかい唇がそれ以上、悲しい言葉を言う前に。舌を突っ込んで、栓をした。

「お前以外に恋するつもりなんてない。この先も、ずっとだ!」
「バカだね、お前」
「バカだよ。フロウのためなら、いっくらでもバカになる」
「ああ、もう、ほんっと救いようのないバカだねー、この子は……」

 顔をくしゃくしゃにして、ほっぺた真っ赤にしやがって。
 目元にえれぇ皴寄ってるじゃねえか、フロウ。
 つまり、その……嬉しいんだ。
 嬉しいんだな?

「言ってろ」

 いーいにおいのする体を抱きしめて。思いっきりなで回した。いじり回した。

 バカめ、バカめと繰り返す生意気な声が、どんどん乱れて。はあ、とか、あふ、とか可愛い喘ぎに変わって行く。

 耳から入るその声が、くすぐったくて首をすくめた。
 汗ばむ体から、あわただしく服をひっぺがして。こっちも脱いで。しまいにゃ脱ぐのと脱がすのがごっちゃになって。
 ようやく、ぺたっと裸の体と体がひっついてから、思ったんだ。

 きっと、これから何度もこう言う会話をするんだろう。その度にバカと言われて。その度にバカになって。
 流れてゆく日々の中、降り積もる想いを確かめる。

 こいつに恋するってのは、つまり、そう言うことなのだ。

(he said,I said/了) 

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