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ローゼンベルク家の食卓

【side3-5】★★★絹のネクタイ(2)

2008/05/03 22:29 番外十海
 足を押し広げて後ろの口を露出させてみる。

「やあっ」

 ん、いいね……濃いピンクになって、震えてるじゃないか。金魚の口みたいに、内側から押し広げられて、ぷっと開いてはまた閉じる。試しに指を這わせてみた。

「あ………やめろってばっ」

 微妙に、堅い。経験がないって訳じゃなさそうだが、最近はあまりお使いになっていないらしい。

「ああ、これは、じっくり解してあげなきゃいけませんね……」
「やめてくれ……ヒウェル」
「恐がらないで、アッシュ」

 顎に手をあて、のぞきこむ。怯え切った青い瞳を。

「初めての夜、あなたはあんなに優しくしてくれたじゃないですか。あなたを裏切るようなマネはしませんよ。だから力抜いて。ね?」
「…………」

 すっかり潤んだ目が見上げてきて、それから、こくん、とうなずいた。

「……いい子だ」

 髪の毛を撫でてから額にキスをして、再び足の間に屈み込む。
 指か。舌か……やっぱ舌だな、うん。

「や……あぁっ、よせっ、そこは………あぁんっ」

 上にキスしたときより、反応が良かった。結構ネコの素質あるんじゃないか、この人?
 舌先で襞をかきわけながら吸ってみる。
 縛られた体で身悶えし、閉じた両目から涙をぼろぼろこぼした。指で広げて舌をさしこむと、ぎゅうっと締めつけられた。

「先輩。そんなに締め付けないで……舌がイっちまいます」
「しょうがないだろ……君が……あ……弄るから……」
「あなたが敏感すぎるんだ」

 びくっとすくみあがったところに指を入れて、そっと動かした。

「あ………ああ……う……くぅ………」
「そう……そうだ、それでいい……」

 次第にぽってりと充血し、指に吸い付いて来る内壁の感触を確かめながら動きを強めて行く。そろそろ二本目を入れようかと思った時。

「ヒ……ウェル………」
「ん。どうしました、アッシュ。きついですか?」
「ち……がう……」

 弱々しく首を横に振る。

「も……がまんできない…………」
「いけませんよ。じっくり解さないとつらいって、あなたが教えてくれたんですよ?」
「いい………から……」
「でも、ねえ」
「早くっ、も、耐えられないんだっ! 欲しいんだっ」

 にいっと口の端がつり上がる。

「何が欲しいんですか、アッシュ?」
「っ」

 真っ赤になって口をつぐんでしまった。いいね、ここで素直に折れられてもつまらない。耳もとに口をよせ、息を吹きかける。

「ひっ」
「言ってください。でなきゃ、わからない」
「あ……あ……」

 左右に視線が泳ぐ。縛られた両手が、何かにすがりつくように空を握る。

「教えてください。ね、先輩」

 くっと唇を噛んだ。おそらく最後のためらいだ。もうすぐ、だ。
 もうじき、花びらみたいな唇がほどけてこぼれ落ちる。
 淫らなお願いが。

「入れてくれ……君……の……」
「俺の?」

 青い瞳が俺の足の間に向けられる。
 
「君の、ペニス……」
「よくできました」

 にっこりほほ笑むと脱ぎ捨てた上着のポケットをまさぐり、財布を取り出す。コンドームを一枚引き出すと、パッケージを口にくわえてピリっと開けた。
 すがりつくように見上げてくる彼の目の前で、必要以上に慎重に。

「着けとかないとね……後が大変でしょう?」

 ぬるりとしたピンク色の薄い膜を、ゆっくりと、すでに臨戦態勢になっている自分の逸物に被せてゆく。

「あ……は……やく……」
「ん……そうしたいのはヤマヤマなんですがね」

 半端にはだけたシャツを軽くつまむ。
 もちろん、俺のじゃない。

「いい生地使ってるなあ。俺の着てる安物とはえらい違いだ。やっぱりこれ、汚すとまずいですよねぇ」

 素早く手首をほどき、シャツを引き抜く。布がこすれるだけでもつらいのだろう。白い喉が震える。
 着ているものを全て取り去ってから、改めて今度は後ろ手に縛り上げた。

「く……こう言うのが、趣味なのか、君はっ」
「ええ。大好きなんです」

 にっこりとほほ笑み、膝の上に乗せるようにして抱き寄せた。
 ただし、後ろから。

「あ……」
「俺、変態ですから」

 尻の双丘に手を当てて押し広げ、露出させたアヌスにペニスの先端をあてがう。

「ん……いい感じに蕩けてますね」
「く……う………い……いい加減にしろっ」

 強気な言葉、しかしほとんど鳴き声だ。たまらないね。

「さっさと、やればいいだろうっ」
「OK、アッシュ。あなたのお望みのままに」

 腰に手を当てて引き寄せて、ぐいっと後ろから貫いた。

「ひぃっ、あ、あ、ああ………」

 膝の上で震えている。やっぱきつかったんだろうなあ。無理しちゃって……。
 根本まで入れてからしばらく抱きすくめ、首筋に、頬に柔らかなキスを落す。震えが収まるまで、じっと。

「……けよ」
「はい?」
「動けよっ」
「わかりましたよ。でもね、その前に」
「なん……だ……」
「前、見て」
「前って……あっ」

 よく見えるように脚を広げてあげた。
 部屋にそなえつけの鏡に映る彼の姿を。後ろから抱きすくめられるようにしてベッドの上に座り込み、俺に貫かれた有り様を。

「あ……や……だ……こんな…………」
「目、閉じないで。せっかくこんなきれいな体してるのだもの。見なきゃもったいないじゃないですか。ねえ、アッシュ?」
「ばかっ、変態っ」

 その通り。さっきも言った。
 しかし体は正直だ。脚の間でペニスは高々と首をもたげ、後ろはぐいぐいと俺を締めつける。

「そんな口叩けるのなら大丈夫ですね。お望み通り動いて差し上げますよ」

 ぐいと腰を押さえ込み、ベッドのスプリングを活かして突き上げる。
 
「あ、あ、ああっ、や、ひ、う、んんっ」

 もはや意地を張るのはあきらめたのだろうか。無防備な悲鳴があがり、白い体が踊る。鏡に写る自分の姿から目をそらさずに。
 素直な人だ。ここはやっぱり、それなりにごほうびをあげるべきだろうな。
 手を回してペニスをこすってやった。

「ひぃっ、ん、ああっ、いいっ、気持ち……いいっ、あ、あ、ヒウェル、ヒウェルぅっ」
「いいですよ……ほら、もっと腰を振って。気持ちのいいとこ、教えてください。好きなだけ、突いてあげますから」

 言われるままに彼は腰をくねらせた。

「ん、あ、そこ、いいっ、もっと突いてっ」
「ここ……ですね」

 いい、と言われた場所を狙って勢い良く突き上げる。

「あ、あ、やあっ、あ、や、んんっ、いいっ、気持ち……い……あ、あ、あ、ひ、や、あぁんっ、もっと……く…、あ、ああ」


 ああ、なんかすっげえ可愛い声で鳴いてるよ。
 思えばこの人は俺と寝る時、一度だってここまで乱れてはくれなかったなあ……。

「も、出る、出るうっ」

 ぐいっと奥まで貫きながら、彼のペニスを根本から先端までしごきあげる。

「ひゃあ、あ、あ、あぁんっ」

 喉をのけぞらせて震えると、白い粘つく熱い液体がほとばしり……彼の顔にまで雫が飛んだ。
 強烈に締めつけられて思わずこっちもイきそうになる、が、寸でのところで堪えた。

「気持ち……よかったですか……先輩」

 視線を宙に彷徨わせたまま、アッシュはとろんとした目で鏡越しに俺の目を見つめて、こくんとうなずいた。

「それじゃあ、次は、俺の番だ」
「えっ」

 汗ばむ白い背中に手をあてて、うつ伏せに押し倒す。
 たった今、彼の精液が飛び散ったシーツの上に。

「ひっ」

 そのまま背後から伸しかかり、獣の姿勢で突いた。今度はさっきより自由に動ける。
 達したばかりで鋭敏になった体を容赦無く抉り、突き上げる。

「ぃ、う、ぐ、あ、や、も、やめ、あ、あ、あぁっ」
「可愛い……な……アッシュ……ほんとに……う……ん……」

 ぐいと奥まで突き入れて、ずっとこらえていた欲情を一気に解き放った。

「く……うぅっ」

 体の奥がら溢れ出す熱をどくどくと、薄いゴムの膜越しに注ぎ込んだ。全部出たかな、と思ったところを不意に締めつけられて、またとくんと出る。


「う……あぁ……」

 最後の一滴まで吐き出してから、ずるりと引き抜いた。コンドームを抜き取り、きゅっと縛った。
 かなり……多い。
 ここんとこずっとご無沙汰だったからなあ。
 支えを失い、ぐったりとベッドの上に突っ伏したアッシュの手をほどいて一言囁く。

「……素敵でしたよ、アッシュ。可愛い人だ」


 ふと思いついて、彼の上着のポケットをまさぐる。
 あった。
 携帯を開いて、かしゃりと一枚。快楽の余韻に酔うあられもない艶姿を写し、ついでに待ち受け画面に設定しておいた。
 次にこいつを開くのはいつだろう。
 どんな顔をするのだろう。

 だいぶ温くなったジンジャーエールのボトルをとり、残りを一気に喉に流し込む。
 さて、帰る前に念入りにシャワー浴びなくちゃな。

「あ……ヒウェ……ル……」

 ベッドの上にうつぶせになったまま、何やらまた色っぽい表情であえいでる。まだ体が疼いているらしい。
 そっと髪を撫で、そのまま首筋から肩、背中、腰へと撫で下ろす。

「ん、あんっ」

 くるりとひっくり返して仰向けにすると、よろよろと腕を伸ばして、すがりついてきた。
 のしかかり、唇を重ねる。

 思い出に浸るのは今夜だけ。帰ったら全て忘れよう。
 でも、その前に……もう一度。



(チョコレートサンデー/了)


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